【内田雅也の追球】雑念を払った、澄み切った心 プロは「神様」の前で

[ 2022年1月12日 07:40 ]

練習試合・阪神-日本ハム戦で超満員となった宜野座村野球場(2017年2月19日撮影)
Photo By スポニチ

 言葉を選ばずに書けば、プロ野球キャンプの観衆発表は実にいいかげんである。大げさ、水増しの数字が並んでいる。

 たとえば、阪神キャンプ地の沖縄・宜野座村野球場。5年前のある日、翌日は日曜日で日本ハムと練習試合、多くの来場者が予想され、球団は駐車場スペースを確認した。

 2017年2月18日のことだ。スタッフが歩いて数えると、隣の村役場、博物館などを合わせ620台だった。このため空き地に約200台分の臨時駐車場を設けた。

 翌19日は予想通り超満員となった。球団の観衆発表はなんと2万6000人だった。観客席の収容人数は7700人であり、駐車台数や各種バスでの乗客数を考えても、いかにも多い。

 何度か指摘したが球団は「のべ人数」と説明する。「のべ」とはどういうことか。朝来て、昼食に出て、また入場すれば2人と勘定するのだろうか。こんな人気をあおるような発表も、さして目くじらも立てなかった。

 だが、今年は観衆発表も慎重に、正確にしなくてはならない。日本野球機構(NPB)は11日、あらためてキャンプを有観客で行う方針を示した。新型コロナウイルス対策連絡会議を受け、コミッショナー・斎藤惇が「2万人以下のお客さんを入れ、開催する」と話した。むろん、感染防止策を徹底し、安心・安全な運営を心がける。

 NPB関係者は「各球団とも“ファンあってのプロ野球”という基本姿勢を感じています。経済的な問題ではなく、観客のいる球場での野球を欲しています」と話した。

 「お客様は神様です」という歌手・三波春夫の有名なセリフを思う。お客様を神のような絶対的存在とみなすように理解されがちだが、本来の意味は異なる。真意を語った言葉が三波春夫オフィシャルサイトにある。

 「歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な藝(げい)をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄(うた)うのです」

 三波が示したのはステージでの本番を意味しているが「雑念を払った、澄み切った心」はプロ野球選手が練習に臨む姿勢に通じる。球場に訪れた「神様」の前で、プロの技を磨くキャンプでありたい。 =敬称略= (編集委員)

続きを表示

「始球式」特集記事

「落合博満」特集記事

2022年1月12日のニュース