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【内田雅也の追球】「情」を超えた采配 新しい世代の両監督が見せた現実的な用兵

[ 2021年11月22日 08:00 ]

SMBC日本シリーズ2021第2戦   ヤクルト2-0オリックス ( 2021年11月21日    京セラD )

<日本S オ・ヤ(2)>完封勝利の高橋(奥)をハグで迎える高津監督。左は青木(撮影・村上 大輔)
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 たとえば、2003年の日本シリーズで敗れた阪神監督・星野仙一について、温情用兵だったとの声がある。不調だった伊良部秀輝を第2戦、さらに第6戦でも先発起用し、ともに敗戦を招いた。「シーズンを通してがんばった」という功労に「情」をかけたというわけである。

 日本シリーズに8度も出場しながら日本一になれなかった西本幸雄は「悲運の闘将」と呼ばれた。親交のあった野村克也は<西本さんが勝てなかった要因をあえてあげるとすれば>と『短期決戦の勝ち方』(祥伝社新書)に記している。

 <それは「情」ではないか>とある。選手たちから「おやじ」と慕われた西本には「甘さ」があったとも指摘する。

 今回と同じカードだった1995年のシリーズで、野村のヤクルトは仰木彬のオリックスを4勝1敗で下した。野村は仰木についても<采配の奥に「情」を宿した監督>としたうえで、短期決戦では「非情」であれ――と説いている。

 この夜、一つの注目はヤクルトのスコット・マクガフ起用法だった。前夜は9回裏に登板し1死も取れずに3失点、逆転サヨナラで敗れていた。クローザーの不調が暗い影を落としていた。野村の教えを知る監督・高津臣吾はどう判断するか。その考えを見るには格好の展開だった。

 まだ1―0だった9回表1死、三塁ベンチ前に高橋奎二が出てきて、キャッチボールを始めた。続投である。

 高橋は8回まで今季最多タイの122球を投げていた。通常なら9回はマクガフではなかっただろうか。だが、高津は星野のように、シーズン中の功労や形にこだわりはしなかった。

 オリックスは同じく前夜不調だったセットアッパー、タイラー・ヒギンスをベンチから外した。1回で33球も投げた疲労への配慮もあったろう。

 いや、監督・中嶋聡はクライマックスシリーズを前に話していた。「短期決戦では調子の悪い選手(の復調)を待っている場合ではない。そこはシビアにいきたい」。

 これは非情だろうか。野村の勝負に対する厳しさ、そして非情を知る高津だが、2018年に出した著書『二軍監督の仕事』(光文社)に<50歳近くになってから、ずいぶんと野球に対する考え方が変わってきた>と記している。<一生懸命やって負けたら仕方ない>という境地である。

 高津も中嶋も同級でいま52歳。日本がバブル景気に沸いたころにプロ入りした「バブル世代」である。星野は戦後1947(昭和22)年生まれの「団塊の世代」。戦争を体験した野村や西本とはむろん、かけ離れている。世代が違うのだ。

 高津も中嶋も情に厚く、選手を信頼もしているが、勝負には現実的に対応している。温情も非情も含め、「情」を超越していると言えるだろう。

 高橋は9回裏、期待に応えて主軸を3人で切って完封してみせた。

 これで1勝1敗。プロ野球では最も新しい世代の両監督はマクガフやヒギンスを第3戦以降、どう起用していくのだろうか。采配も含め、楽しみが広がる展開になってきた。 =敬称略= (編集委員)

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