「1番・近本」の積極スタイル変える必要ない

[ 2021年8月20日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4-5DeNA ( 2021年8月19日    東京D )

<D・神18> 4回無死、近本はバント安打を決める(撮影・大森 寛明)
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 【畑野理之の理論】4時間ゲームの最初の数秒に注目していた。プレーボール直後、阪神・近本光司が133キロスライダーを打って中飛に倒れた。また初球だった。初戦はボールの後の2球目を左中間二塁打、2戦目は初球スライダーを左飛だった。この3連戦、先頭打者で迎える第1打席はすべてファーストストライクを打っていった。たまたまではないと思う。信念なのだろう。

 この日の全4打席の結果を先に書いておくと…。4回先頭では初球を三塁側へセーフティーバント成功。6回は2ボールの後のチェンジアップを振ったもののファウルで、最後はフルカウントから右中間への二塁打。7回の第4打席はボール後の2球目をやはり振って(ファウル)、次球を一ゴロだった。

 1番打者なのだからじっくり見ていって…とよく指摘されてしまう。粘って四球を選んだらいいじゃないか…という見方があることも確かだ。20四球はリーグ最多の392打席にすれば多くはないが、近本は安打を打ってチームを勢いづけたいと考えている。

 実際、カウント別の打率をみても初球が57打数20安打の・351と、かなり高い。その初球を含めた0ストライクからの通算打率・327(107―35)は、1ストライクからの・301(103―31)、2ストライク後の・280(157―44)と比較しても断然にいい。

 今シーズンの開幕前、同じ俊足の1番打者で盗塁王の先輩でもある本紙評論家・赤星憲広との対談でもこう話している。「打者としても評価されたいんです。僕はあまり四球をとるタイプじゃなくてどんどん振っていくので最多安打とか…。赤星さんだから初めて話しますが、年間200安打を打ちたいんです」。1年目の19年は159安打、2年目はシーズン120試合制だったこともあり139安打。過去に6人(7度)しか到達していない200という数字を意識していた。この日90試合目で計110安打。現状ペースでは200本に届かないが、それでも最多安打はトップのDeNA・佐野恵太を3差に追っており、逆転の可能性は十分にある。

 1球でアウトになれば「あっさり」「簡単に」「もったいない」と見られてしまうが、それらの声を黙らせるだけの数字をはっきりと残している。打者有利のカウントで勝負すれば確率が上がるのは必然。近本が今の積極姿勢を変えることは思ってもいないだろうし、そのスタイルを曲げる必要性もまったく見当たらない。 =敬称略= (専門委員)

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2021年8月20日のニュース