1回完全デビュー!ロッテ・朗希の12球が球界照らす 震災から10年の翌日に「感謝」の一歩

[ 2021年3月13日 05:30 ]

オープン戦   ロッテ3―2中日 ( 2021年3月12日    ZOZOマリン )

<ロ・中>6回に登板し3者凡退に斬った佐々木朗(撮影・長久保 豊)
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 最速163キロを誇る高卒2年目のロッテ・佐々木朗希投手(19)が12日、中日とのオープン戦で実戦デビュー。6回に2番手で登板し、4番のビシエドから見逃し三振を奪うなど3者凡退に斬った。12球中、11球が直球で最速は153キロ。東日本大震災で父・功太さん(享年37)を失った少年は10年の歳月を経て成長し、ついに大きな一歩を踏み出した。

 これも運命か。忌まわしき東日本大震災から10年がたった翌日の「3・12」。佐々木朗は6回のマウンドに上がった。

 「マウンドから見た景色は凄く興奮した。楽しかったし、今、プロ野球選手としてマウンドで投げて、野球ができていることに感謝しています」

 2年目で、やっとたどりついた場所。ファンの拍手は温かかった。19年9月6日に高校日本代表として韓国で行われたU18W杯の韓国戦で登板して以来553日ぶりの実戦。「緊張した」と振り返るが、先頭・京田を1球で一ゴロに打ち取った。続く阿部の2球目に投げた唯一の変化球であるスライダーは外角に大きく外れたが、最後は内寄りに150キロを投じて遊ゴロに斬った。

 圧巻は18年首位打者のビシエドとの対戦。5球目を投げる前に捕手・田村のサインに首を振った。投じたのはこの日最速の153キロ。続く152キロで見逃し三振を奪うと「よっしゃあ」と控えめに声を出した。「結果的に三振を取れた。3者凡退に抑えて安心した」。その表情も緩んだ。

 未曽有の大震災を9歳で経験し、当たり前と思っていた現実が一瞬で当たり前でなくなることを知った。だから大船渡時代に最速163キロを計測し、周囲が騒いでも舞い上がることはなかった。1年目の昨季は右肘の不安などで実戦登板を果たせなかったが「意味のある一年だった」と言う。あせり、もどかしさを心の奥底に押し込めて地道に練習を重ねた。一瞬の怖さを知るからこそ、壊れない体をつくることに徹した。

 昨年5月末のシート打撃登板で160キロを計測しただけに井口監督も「だいぶ余裕を残していた」と認める。次回も1軍のオープン戦となる予定。このまま順調にステップを踏めば、今季の早い段階で公式戦デビューする可能性はある。

 「令和の怪物」。そう呼ばれる宿命を背負う。だから今後も球速に注目が集まるが「時間がたてばスピードも出てくると思うけど球速が出た、イコール、ハッピーではない。抑えることが大事なので」と言う。コロナ下で沈む世の中に、伝説の始まりを予感させた12球。19歳はリミッターを外して160キロ台を連発する未来に向け、しっかりと歩を進める。(横市 勇)

 ▼ロッテ・田村(バッテリーを組んだ佐々木朗について)制球もよかったし、スピードも出ていてよかったと思います。

 【対戦の中日打者3人も絶賛】
 ▼中日・京田 マウンドでの立ち姿に華がある。日本中が注目している投手と思った。

 ▼中日・阿部 ストレートは速かった。

 ▼中日・ビシエド 投手として素晴らしいものを持っているし、今後の活躍を敵ながら応援したいくらいの投手。

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2021年3月13日のニュース