新幹線の運転士、警察官…野球だけじゃない、特別な夏を終えた球児の進路

[ 2020年8月23日 09:00 ]

球場で試験案内をする八千代警察署の小西さん(左)と警務係長の畑さん(撮影・柳内 遼平)
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 全国の都道府県高野連が独自に開催する代替大会は、23日の埼玉大会決勝、神奈川大会決勝を最後に全日程が終了する。特別な夏を終えた球児たちはプロ野球、大学、社会人など、それぞれの進路希望を口にした。

 印象に残っている選手がいる。甲子園交流試合、16日の帯広農戦で2回無安打無失点の好投を見せた高崎健康福祉大高崎の朝井優太投手(3年)だ。試合後、取材陣は金星を挙げた帯広農側に殺到。U15日本代表に選抜された経験を持つ右腕の前にいたのは私のみで、じっくりと話を聞くことができた。

 事前にJR東日本を志望していると聞いていた。確認のために「次の舞台は社会人野球ですか?」と問うと「夢はJR東日本入社です。でも野球はやりません。新幹線の運転士になりたいです」と答えが返ってきた。野球は社会人になるための土台づくり。そう考える朝井は大学でも野球を続け、さらに自分を磨いた上で夢に挑戦する考えだ。「小さいころから電車が好きです。マウンドと一緒で、わくわくします」。将来、彼が運転する新幹線に球児が乗って試合に向かう。そんな日が来るかもしれない。

 また、この夏に選手に熱視線を送っていたのはプロ野球のスカウトだけではない。今月5日の千葉県大会では珍しい「スカウト」を見た。試合会場の八千代総合公園野球場の入口で、女性警察官の小西亜希葉さんが「千葉県警察官募集」の旗の横で笑顔を振りまいていた。

 千葉県八千代警察署は高校球児の採用を目指し、市と県高野連の協力を得て試験案内を球場で実施した。発案者の警務課、警務係長の畑直樹さんは「野球で鍛えられた運動能力、上下関係、状況判断は警察官として必要な能力です。活用できる場所があると知ってほしくて来ました」と理由を説明した。決して直接声を掛けることはせず、熱戦を終えた選手たちを笑顔で見守り続けた。「彼らの気持ちを考えれば、声はかけられません。ここにいたことだけでも思い出してもらえれば」。来場した多くの保護者がパンフレットを持ち帰った。きっと子供たちの目に入るだろう。

 コロナ禍での高校野球。かつてない苦境の当事者であった球児たちはどんな道へ進んでも、その経験が生きるはずだ。(記者コラム・柳内 遼平) 

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2020年8月23日のニュース