ヤクルト・嶋 開幕に反対する声があるのは承知…それでも「僕たちはやるべき」

[ 2020年5月12日 06:30 ]

ト戸田球場で練習に汗を流す嶋(球団提供)
Photo By 提供写真

 ヤクルト・嶋基宏捕手(35)が11日、埼玉県戸田市の球団寮でオンライン取材に応じた。東北に甚大な被害をもたらした東日本大震災が発生した2011年当時は楽天の選手会長として被災者を勇気づけた男が、コロナ禍で開幕が延期している現状について胸中を明かし、前向きなコメントも発した。また、昨季までの同僚で岩手出身の楽天・銀次内野手(32)も「プラス思考」の大切さを強調した。

 コロナ禍でシーズン開幕も見通せない苦境。開幕延期は東日本大震災が発生した11年以来、9年ぶりの異常事態だ。当時、被災地球団である楽天の選手会長だった嶋は、野球が持つ「底力」を身をもって感じた一人である。

 球団寮で行われたオンライン取材。まずは「野球を待っている人もいれば“今はやるべきじゃない”という方も絶対にいる。早く開幕すれば良いという問題ではない」と複雑な胸中を吐露した。ただ震災当時に「見せましょう、野球の底力を…」というスピーチで被災者を勇気づけ、試合開催に賛否のある状況下でも球界の先頭に立ち続けた35歳は言い切る。「“野球があって良かった。野球を見て、また頑張ろう”と思ってくれる人がいる限り、僕たちはやるべき」。慰問などで直接、被災者と触れ合った経験がある。野球が人々の立ち上がる力になれることを知っている。

 自身も立ち上がろうとしている。3月21日の阪神との練習試合で右手親指付近を骨折したが、ここまでリハビリは順調。ブルペンでの捕球や遠投、打撃練習もこなせるようになり「(状態は)9割ぐらい」という。開幕は最短で6月19日。十分に間に合う見通しだ。

 現在は休校措置などで部活動ができない学校も多い。多くの人が我慢を強いられる状況の中で「ユニホームを着て練習させてもらえるのは幸せなこと」と感謝する嶋は続けた。「開幕日が決まったら心と体の準備をして。良いパフォーマンスを見せられるようにしたい。楽しみに待っていてください」。ファンに最高のプレーを見せるため、準備を進める。(黒野 有仁)


 ▽嶋の「底力」スピーチ 東日本大震災から約3週間が経過した2011年4月2日、復興支援の慈善試合が行われ、楽天の選手会長だった嶋が日本ハム戦(札幌ドーム)の前にスピーチ。「あの大災害、本当にあったことなのか今でも信じられません」と話し始め、約3分間、被災地に寄り添う言葉を述べた。「見せましょう、野球の底力を。見せましょう、野球選手の底力を。見せましょう、野球ファンの底力を」という強いメッセージは多くの共感を集め、同年の流行語大賞にノミネートされた。


 《奥川 想像の「はるか上」》嶋はドラフト1位の奥川についても言及。8日に初めてブルペンでの投球を受けており「イメージしていたよりはるかに上だった。球のスピンが利いた感じとか。フォークも精度が高いなと思った」と高く評価した。楽天でバッテリーを組んだヤンキース・田中との比較については「また違うタイプ」としながらも「実績を積んでいけばヤクルト、日本のエースになる」と期待した。 

続きを表示

この記事のフォト

2020年5月12日のニュース