野球界発展へ期待したい「世界の王」と「世界のイチロー」の超強力タッグ

[ 2019年12月24日 09:00 ]

2006年WBCで世界一に輝き、トロフィーを前に笑顔を見せる王貞治監督(手前左)とイチロー(手前右)
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 改めて、王貞治氏(ソフトバンク球団会長)の偉大さを感じた。先日、イチロー氏は子供たちに自身のスーパースターを問われ、世界一に輝いた06年第1回WBCの指揮官だった「王貞治監督」と言い、「王監督に会った人はみんな好きになる」と理由を述べた。

 世界記録の868本塁打を放った「世界の王」。日米通算4367安打を誇るレジェンドが憧れているは実績はもちろん、高潔な人格だからだ。18年前のことを思い出す。

 王氏の前妻が亡くなった01年12月。通夜の取材だった。デスクの指示は王氏のコメントをとること。しかし、告別式では聞くことができても、取材対応のない通夜で話を聞くことは困難。しかも、面識すらない。正直、逃げだしたい心境だった。それでも鬼のようなデスクの指令に逆らえるわけもなく、ダメ元で葬儀場に突撃した。

 王氏は気丈に振る舞っていたが、その姿が逆に痛々しくも見えた。「失礼を承知でお願いします。話を聞かせてください」。怒ってもおかしくないが、悲壮感を漂わせるこちらの立場をすぐに理解してくれた。嫌な顔を見せずに「何を聞きたいんだ、君は」と言い、亡き妻への感謝のコメントをもらった。本心からの言葉。取材を受けてくれたことが、信じられなかった。

 何を伝えたいかと言うと、本物の優しさがなければこんな対応はできない。王氏は超がつくスーパースターにも関わらず、誰に対しても、分け隔てなく接することができる懐の深さがある。だから、イチロー氏の「みんな好きになる」という言葉に共感した。思えば、現役時代から知る先輩記者で王氏の悪口を言う人はいなかった。

 ヤクルトからソフトバンクに移籍したバレンティンも自身のインスタグラムで「尊敬するレジェンドと戦えることをとても楽しみにしている。チームと契約する決断の重要な一部だった」と王氏の存在を挙げた。城島健司氏は会長付特別アドバイザーに就任。12年の現役引退後初の球界復帰となり、恩師・王氏への恩に報いる。

 79歳。球団会長を務めるソフトバンクでさらなる求心力を発揮しているが、野球界全体を見渡す立場になってほしいと願う。イチロー氏は学生野球資格回復の研修会を受講し、高校、大学生への指導が可能となる。影響力の大きい2人が野球界発展のためにタッグを組めば、プロアマの垣根をさらに取り除くことなど、不可能なことはないはずだ。(記者コラム・飯塚 荒太)

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2019年12月24日のニュース