エンゼルス遊撃手シモンズがチャリティーイベントを初開催した理由

[ 2019年7月1日 08:15 ]

松葉杖で出席者と交流を深めるシモンズ
Photo By スポニチ

 エンゼルス・大谷がサイクル安打を達成した翌日のスポニチ紙面(東京版)で「離脱シモンズに“恩返し”のサインバット」という見出しの記事を掲載した。エ軍の遊撃手シモンズがヒスパニック系の学生奨学金を支援するチャリティーイベントを初開催し、大谷がサイン入りバットを提供したというエピソードだが、この話をもう少し詳しくお伝えしたい。

 5月下旬にアナハイム近郊のホテルで初開催された同イベント。チームメートだけでなく、バーランダー(アストロズ)、リベラ(元ヤンキース)など他球団の大スターもオークションにサイン入りグッズを提供した。左足首捻挫のため松葉杖姿のシモンズだったが、イベントに参加した関係者やファンと積極的に交流を深める姿が印象的だった。

 シモンズはオランダ領アンティルのキュラソー島出身。イベントを初開催した理由について熱っぽく語ってくれた。「故郷のキュラソー島に住んでいた時に(米国東部メイン州の)メイン大学に興味を示してもらったが、断らなくてはならなかった。両親に学費を払うだけの余裕がなかったんだ」。その後、ウエスタンオクラホマ州立大学に進学することができたが「両親は僕が離れて暮らすための家賃や食費などをねん出するために、あちこちに頼んで、お金を借りなければならなかった」。そこでメジャーリーガーの夢を掴むわけだが、両親や援助してくれた周囲への感謝は今でも胸に刻み込まれているという。

 「両親が頼んで回って、お金を借りられていなければ今の僕はない。今度は僕が同じような境遇の若い人たちを助けてあげたいんだ。学校に行くことで人生を変えられるように。メジャーリーガーにはなれるかは分からないけど、弁護士とか医者とか…。もしかしたらこの奨学金が彼らの人生を変えられるかもしれない。恩返しをしたいんだ」。

 イベントは試合後にも関わらずヒーニー、スカッグス、アップトンなど数々のチームメートも出席し、普段からの人徳や人望の厚さがうかがい知れた。日本のファンも参加しており「日本のファンが多くてビックリした。遠くから応援してくれているので嬉しい。ありがたい」と感謝の言葉を口にしていた。

 「良いことだから来年も開催するかもしれない。若い人や子どものためになることをやっていきたい」。シモンズは6月27日(日本時間28日)のアスレチックス戦で戦列に復帰。大谷はもちろん、心優しき守備の名手のプレーにも注目してもらいたい。(記者コラム・柳原 直之)

続きを表示

この記事のフォト

2019年7月1日のニュース