阪神・原口「幸せ」サヨナラ打!約束のお立ち台「みんな、ただいまー!」

[ 2019年6月10日 05:30 ]

交流戦   阪神4―3日本ハム ( 2019年6月9日    甲子園 )

サヨナラ適時打を放った代打・原口(中)を矢野監督が祝福(左は糸井) (撮影・成瀬 徹)
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 大腸がんから復活した阪神・原口文仁捕手(27)が9日の日本ハム戦で3―3の9回2死二、三塁で代打出場し、中前にサヨナラ打を放った。大病という苦境から這い上がってきた男の劇的な一打で甲子園は感動の渦に包まれた。チームは12球団最多の6度目のサヨナラ勝利で同一カード3連敗を阻止。チームの貯金は5となった。

 この景色を見るために戦ってきた。念願だった甲子園でのお立ち台。「みんな、ただいまー!」。総立ちで、涙を流すファンもいるスタンドを眺めながらそう叫んだ。接戦を終わらせたのは原口のバットだった。

 「最高です!センターの前に“落ちてくれ”という願いだけで走っていました。たくさんの方に集まっていただいて、選手は幸せな気持ちで野球ができています。本当にありがとうございます」

 3―3の9回2死一、三塁で代打起用されると、初球に一塁走者の北條が盗塁して二、三塁になった。「最高の場面を演出してもらった」。カウント1―1からの、右サイドハンド秋吉のスライダーにバットを伸ばして捉えると、キレイなライナーで中前に弾んだ。一塁ベース付近で何度もガッツポーズ。ナインの祝福でズブぬれになったあと、駆け寄ってきた矢野監督と熱い抱擁だ。

 「ベンチで声を出してくださった先輩や後輩がいるなかで、早い段階で準備させてもらったので、感謝の気持ちで一杯でした。そこで良い準備ができた」

 昨オフ。思いもよらぬ病の判明に「“人は本当にがんになるんだな”って。他人事のように思っていたのが、いざ自分のところに来て…」。信じられない感情があった。しかし「お医者さんの表情や口調ですぐに“本当なんだ”って」。帰省中だった夫人に真っ先に報告した。

 「妻は一度、最悪の事態まで考えてから、気持ちを落ち着かせて帰ってきてくれた」。無事に手術を終えたあと、背中を押してくれたのは夫人が繰り返した言葉だ。“がんは治ったからね?”。“今はもうなんともないでしょ?”“だからもう大丈夫”―。何度も言い聞かせてくれたから前向きに戦ってこられた。「良い意味で忘れられるようにしてくれた」。多大な感謝の思いは、勇姿を届けることで伝え続ける。

 ヒーローインタビューの最後。『必死のグッチ』と書かれたピンク色のタオルを掲げて「スリー! ツー! ワン! 必死の、グッチー!」と叫んで締めた。昨オフ、ファンとのパーティーに出演した際に選んだ決めゼリフだ。3月7日に鳴尾浜球場に帰ってきた時に「1軍でやりたいことがある」と言った念願のパフォーマンス。初めてだけにファンと声をそろえることができず「練習不足でしたね(笑い)。もっとうまくできるように練習したと思います」と照れたが、その表情には充実感があふれていた。(巻木 周平)

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