「分岐」は2つの犠打 原監督「彼らにやらせなかったら意味ない」

[ 2013年1月6日 08:18 ]

4月15日DeNA戦で犠打を決める阿部

野球人 巨人・原辰徳監督(上)

 確信を持って原監督が出した2つのサイン。それはペナントを制するためのサインだった。1つ目は4月15日のDeNA戦(新潟)の8回無死一塁の阿部の送りバント。2つ目は4月30日の阪神戦(東京ドーム)の7回無死一塁の村田の送りバントだ。

 「バントのサイン。これをチーム全員がその方針の中できちっとやる。この作戦を選択するならば、彼らにやらせなかったら意味がないと思った。自分の中でね。そこが分岐でしょうね」

 いずれも犠打は成功したが、得点には結びつかず、4月15日は1―3で敗戦、4月30日も0―0で引き分けた。だが、原監督は3年ぶりのリーグ優勝へのターニングポイントをこの2つの犠打だと明言する。

 統一球導入2年目。11年は飛ばないボールに強力打線が苦しみ3位に終わった。昨季も3月30日のヤクルト戦(東京ドーム)は9回1死まで無安打に抑えられ、球団史上初の開幕戦零敗。開幕7戦でセ・リーグ初となる4度の零敗と貧打が続いた。

 「オープン戦の時から打線がよくなかった。で、開幕しても一向に上がってこなかった。このままの野球をやっていたら、勝率は上がってこないだろうなと」

 選手に任せる野球から、ベンチが動く野球へ。「点差を見る限り1―0、2―1とか小差のゲームが多かった。(選手に)任せていてはなかなか点が入らない。だから野球を変えないといけないな。チームとして動かないといけないなと思った」。その意識付けが4、5番に出した犠打のサインだった。

 単なるひらめきではない。用意周到に準備を進めていた。開幕直前の3月28日。東京ドームでの全体練習で報道陣をシャットアウトした。「バント、バスターエンドラン、スクイズであったりセーフティースクイズ。今年は使わなかったけど無死三塁でエンドランの練習をやったり。そういうふうな練習をしないと駄目だと思った」。オープン戦で12球団中11位のチーム打率・212の時点で、ベンチ主導の野球へ切り替える準備を整えていた。

 4月26日のDeNA戦(鹿児島)から定着した1番・長野、3番・坂本の入れ替えが、巻き返しの一手だったと評された。「確かに1番、3番を入れ替えたのは派手な部分では変わった部分かもしれない。でも、それよりも分岐というならばそこ(犠打)だと思う」。主軸に送りバントをさせた原監督の采配。それは球界の盟主を襲った激震も関係していた。

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2013年1月6日のニュース