原監督 ベンチで暴れた長野に「気分悪い」と叱咤

[ 2013年1月6日 15:01 ]

長野(右)を超一流に育てようと厳しく接する原監督

野球人 巨人・原辰徳監督(下)

 開幕前、原監督は「準備はしっかりした。あとは開幕したら、しっかり観察してチームを動かすことが監督の仕事」と言った。観察して、動かす。その際に重要なのは言葉であると強く思っている。

 4月19日のナゴヤドーム。1―4で中日に連敗した。4打数無安打だった阿部を試合後、監督室に呼んだ。「バッティングが雑過ぎる。みんながおまえを見ているんだ」。捕手、主将を承知で据えた4番への叱咤(しった)。期待が大きいからこそ一対一で目を見つめながら伝えることを大切にする。

 昨季、厳しく接した選手の一人は長野だった。11年は主に3番だったが、4月26日のDeNA戦(鹿児島)から1番を任せた。しかしその時点での打率・321が、5月20日の交流戦のソフトバンク戦(東京ドーム)では・277まで下降。慣れない1番にもがいていた。

 その様子を観察しながら原監督は、ある出来事を見逃さなかった。「長野は温厚そうで(坂本)勇人なんかより直情型だね。勇人は内なる闘志。2人ともいい闘争心を持っているけど出し方が全然、違うね」。5月23日の西武戦(西武ドーム)。西武の先発・岸に手を焼き、4打数無安打だった長野は凡打の直後にベンチで暴れた。「暴れたというか…。何か蹴ったりしたと思います」と長野は振り返る。「あまりに度が過ぎたから後で2人きりで話したんだ」と原監督。翌日、ジャイアンツ球場での練習中、報道陣をシャットアウトした室内練習場でこう告げた。

 「凡打してカッとなってスーッとするのかって。俺たちは気分悪い。やるならまずは“すみません”だろって。チームに迷惑かけたんだから。すみませんってやって、やるなら裏でやるなりしたらどうだ」。ただ叱っただけではない。「おまえさんが素晴らしい野球人になる道のりとしては、よくない。俺は、おまえを超一流の選手にしようと思っている。世界に通用するね」と付け加えた。

 長野と同様、期待するのが坂本。「勇人はね、昨年は割とお利口さんだった。ジーッと観察しながらね、“これをやったら怒られる”とか分かっている」。生え抜きのリーダー候補への原流の指導法。引退した松井秀喜と長嶋茂雄元監督とは少し違うが、伝統を背負いながら戦う監督と選手の関係性は継承されている。

 13年の戦いが始まる。「選手もそうだけど、私自身も意思を伝えないといけないし、言葉で説明をしないと。それが私の中での監督という仕事でしょう」。円熟の監督生活10年目も一歩ずつ、前に進む。

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2013年1月6日のニュース