走り高跳び・衛藤 4年後は“歓声”に動じない男に

[ 2016年8月16日 12:38 ]

2メートル17をクリアする衛藤昂

リオデジャネイロ五輪陸上・走り高跳び

 思わぬ形で、極限の集中もそがれた。陸上男子走り高跳び予選。初出場の衛藤昂(25=AGF)は2メートル17を一発クリア。だが、続く2メートル22の1回目が男子100メートルと重なると、場内の大歓声に集中を乱し、3回とも失敗に終わった。「悔しい」。そう声を振り絞った衛藤は「(100メートルで会場が)盛り上がるのは分かっていた。言い訳になるので」と、それ以上は言葉をのみ込んだ。

 寡黙に努力を続ける孤高のジャンパー。自分より大柄な海外勢と渡り合うため、フォームを改良した。踏み切り位置を遠くすることで、より大きな放物線を描けるようになった。平日は実家近くのAGF鈴鹿工場で8時間の勤務後に約3時間、決められたメニューをこなす。鍛え上げられたアキレス腱は、和式トイレにしゃがむことができないほどの固さを誇る。6月の日本選手権で自己記録を1センチ更新する参加標準の2メートル29をクリア。“1センチの壁”を越えてたどり着いた夢舞台だが、酷な現実が待っていた。

 「もっと実力をつけないと」。4年に1度の祭典は、想定外のことも起こり得る。何事にも動じない跳躍を目指し、新たなルーティンを模索する。

 ◆衛藤 昂(えとう・たかし)1991年(平3)2月5日生まれ、三重県鈴鹿市出身の25歳。小学3年に自宅近くの沿道を走る全日本大学駅伝を見て長距離を始め、小学校最後の地元大会で出場した走り高跳びで優勝して競技転向。三重・白子中から鈴鹿高専、筑波大大学院と進み、現在はAGF所属。日本選手権には3度優勝。11年から3大会連続でアジア選手権に出場し、15年に優勝。同年世界選手権に初出場も予選敗退。1メートル83、67キロ。

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