弱者切り捨てか、改善策か…日本ラグビー 大学、地域Lの“改革”

[ 2016年4月8日 08:25 ]

今年1月のラグビー大学選手権で7連覇を達成し、あいさつする帝京大フィフティーン

 果たして弱者切り捨てか、あるいは改善策か。3月の日本ラグビー協会の理事会で、今年度の全国大学選手権の大会方式が決まった。出場校は昨年度までの18チームから4減の14チームに。4チーム総当たりのプール戦も廃止され、変則トーナメント方式で全試合が行われる。

 決定までには紆余曲折があったと聞く。これまでは関東大学対抗戦、同リーグ戦、関西リーグの主要3リーグにそれぞれ5枠が確約されていたが、今年度からは3枠となる。前年度の優勝校、準優勝校の所属リーグに翌年度1枠ずつが配分されるため、今年度は関西リーグからは3校しか出場できない。当然のように、リーグ間で様々な綱引きがあり、大学関係者からは反発の声があった。

 ただ振り返れば8チーム中、上位5チームが出場できた昨年度までの方式に、相当な違和感があったことも事実だ。対抗戦5位ながら大会では準優勝した14年度の筑波大の例はあるが、やはりリーグ下位から「全国」と名の付く大会に出場できることで、リーグ戦の価値を落としている部分があったと思う。30チーム中16チームがプレーオフに進出できるNBAの例はあるが、敗者復活の可能性をむやみに広げては、試合の緊張感も失われてしまう。その意味では今回の変更は「改善」されたと評価したい。

 現在、日本ラグビー協会では来年度のトップリーグの下部カテゴリーの改組に向けて、議論が重ねられている。関東ラグビー協会が管轄するトップイースト、関西ラグビー協会のトップウエスト、九州ラグビー協会のトップキュウシュウと3地域協会ごとの下部リーグを一つにまとめようとする動きだ。背景には地域間でレベル差やチーム数の開きがあり、全体のレベルアップにつながっていない現状がある。サッカーで言えばJ1とJ2のような仕組みがようやく実現しようとしている。

 一方で、ここでもチーム関係者を中心に反対の声が根強いと聞く。全国規模での開催となれば、遠征費用などの負担が各チームに重くのしかかるからだ。基本構想は10チーム程度だというが、金銭的な体力を理由にラグビー部の強化を諦めてしまうチームが現れれば、弱者切り捨てとなりかねない。

 痛みの伴わない改革はないが、痛みに見合う対価がなければ改革する意味はない。ぜひ議論を尽くし、日本ラグビー界にとって最善の舵取りをしてもらいたい。(阿部 令)

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2016年4月8日のニュース