白鵬、猫だまし連発で全勝キープも…協会幹部苦言「負けたら最低」

[ 2015年11月18日 05:30 ]

栃煌山(手前)に2度目の猫だましを繰り出す白鵬

大相撲九州場所10日目

(11月17日 福岡国際センター)
 36度目の優勝を狙う休場明けの横綱・白鵬は関脇・栃煌山に2度の猫だましを繰り出し、寄り切りで全勝を守った。格下が奇襲として仕掛ける場合は過去にあったが、受けて立つ立場であるはずの横綱が猫だましをすることは前代未聞。横綱本人は満足げだが、協会幹部は苦言。優勝争いは全勝の白鵬を1敗で日馬富士、2敗で稀勢の里ら3人が追う展開となった。

 前回対戦の先々場所に敗れた相手とはいえ、まさかの行動だ。史上最多優勝を誇る白鵬が栃煌山を相手に立ち合いで両手を“パチン”。その後、大きく左に動くと相手の振り向きざまに再び“パチン”。2度の猫だましで動揺させると右四つに組んで寄り切り、全勝を守った。土俵で笑みを浮かべた横綱とは対照的に熱戦を期待した館内はざわざわ…。称賛よりもどよめきの声が上回り、ついには罵声まで飛んだ。

 引き揚げた支度部屋では自ら両手を叩くしぐさをして「勝ちにつながったのでうまくいったことにしましょう」と作戦成功を明言。館内の反応が微妙だったことを問われると再び両手を叩き「“これ”のこと知らないんじゃない?一瞬だからよけたように見えたんじゃない?」と言った。

 だが、悦に入る白鵬とは対照的に、幹部の意見は厳しい。北の湖理事長(元横綱)は「横綱としてやるべきことじゃない。前代未聞。負けたら横綱として笑いもの。負けたら最低です。負けたら品格に引っ掛かる」とバッサリ。4日目の嘉風戦で変化気味となった際に理事長は「体が反応することはある」と理解を示したが、今回は「とっさに変わるのとわけが違う。考えられないよね」と断罪した。土俵下の藤島審判部副部長(元大関・武双山)は「普通は小兵がやる。相手が強いから効く。相撲道の中ではぶざまですから」との見解を示した。

 横綱としてふさわしくないのでは?との報道陣の質問に白鵬は「帰ってビデオを見たら分かるんじゃない?こういうこともあるんだとね」と一つの技を披露できたことに納得の様子。理事長から批判的な意見があったが?と問われると「また変な質問だね」と首をかしげた。帰り際には知人に再び“パチン”。「楽しんでいます」と満喫する後半戦だが、誰もが納得する相撲道からは程遠かった。

 ▽猫だまし 立ち合いの瞬間などに、出てくる相手の目の前で両手をパチンと叩く技の名称。ひるんだ相手の動きの隙を狙って、懐に飛び込んだり、足を取ったり、横や後ろに回りこんだりする狙いで行う。奇襲、かく乱戦法。かつては小兵の舞の海が得意としていた。また、62年九州場所5日目には当時平幕の出羽錦が横綱・大鵬に、78年初場所11日目には当時大関の三重ノ海が横綱・北の湖に仕掛けたことがある。いずれも横綱が動じることなく勝っている。

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