加藤　初の世界選手権代表、順大同期との争い制した

世界選手権の代表に決まり、観客席の声援に応える加藤

　体操のＮＨＫ杯兼世界選手権代表選考会最終日は９日、東京・国立代々木競技場で行われ、男子は加藤凌平が野々村笙吾＝しょうご＝（ともに１９、順大２年）に０・２７５点差をつけ２位となり、初の世界選手権（９月３０日開幕、ベルギー）代表入りを決めた。代表に内定していた内村航平（２４＝コナミ）が史上初の大会５連覇を達成。また、女子は全日本選手権４位だった寺本明日香（１７＝レジックスポーツ）が逆転で初優勝し、２大会連続の代表入りを決めた。世界選手権代表の男子残り４人、女子残り３人は２９、３０日に行われる全日本種目別選手権（東京体育館）で決まる。

　死闘の先にあった０・２７５点差の明と暗。戦いを終えた１９歳同士の表情は逆に見えた。勝った加藤は無表情を装い、敗れた野々村は笑顔。「競った相手がライバルの野々村で良かった」と言った加藤に、野々村は「これが実力」と潔かった。

　最終日を迎えるまで２人の点差は１・１２５。先月１９日、つり輪のワイヤが切れる事故で右肩を痛めた加藤は、普段の構成より難度を２点近く落とし、耐えた。一方の野々村は前日を０・７００点上回る「満足」の演技で追い詰めた。最終種目の鉄棒は野々村が先に１５・３５０点を出し重圧をかけたが、直後の加藤も前日の得点を０・３５０点超える１５・１００。妥協のない戦いは２人の切磋琢磨（せっさたくま）を物語っていた。

　両者を指導する順大の冨田洋之コーチは「（故障で）普通の選手ならミスが出るところでミスしなかった加藤も、点差を詰めた野々村も勝負強さを見せてくれた」と評価した。野々村は種目別を欠場するためそろって世界選手権出場の機会は持ち越しとなったが、２人の戦いを見守った内村は「大学２年生であれだけ観衆を沸かせる演技をするのが気持ち悪い」と頼もしそうに“賛辞”を贈った。

　▽男子個人総合　（１）内村航平（コナミ）２７３・５７５点（持ち点９１・１７５、１回目９０・６５０、２回目９１・７５０＝床運動１５・７００、あん馬１５・０００、つり輪１５・１００、跳馬１５・０５０、平行棒１５・１００、鉄棒１５・８００）（２）加藤（順大）２６６・０７５点（３）野々村笙（順大）２６５・８００点（４）田中（徳洲会）２６４・４００点（５）小林（コナミ）２６２・５７５点（６）斉藤（徳洲会）２６１・３５０点　※内村は５年連続５度目の優勝