室伏 男子ハンマー投げ19連覇も世界選手権出場は未定

[ 2013年6月10日 06:00 ]

男子ハンマー投げで19連覇を果たした室伏

 AKB48ならぬ「AKV48」だ。陸上日本選手権最終日は9日、東京・味の素スタジアムで行われ、男子ハンマー投げで、室伏広治(38=ミズノ)が76メートル42で19連覇を達成。2位に6メートル31の大差をつける圧勝(A)で、広治(K)が強さを見せつけ、父・重信氏(67)の12勝、妹・由佳さん(36)の17勝と合わせ、室伏ファミリーで日本選手権「V48」に到達した。出場権を持つ世界選手権(8月、モスクワ)の出場は未定だが、これからもハンマー界の“センター”は譲らない。

 日本の“ハンマー投げ総選挙”に波乱はない。指原莉乃(20)が驚きの1位に輝いたAKB48の選抜総選挙から一夜。1投目で75メートル41をマークし、開票即優勝確実とした室伏は、5投目に76メートル42まで伸ばした。前人未到の19連覇。父の重信氏は同種目12勝、昨年で陸上界から“卒業”した妹・由佳さんは円盤投げ12勝とハンマー投げ5勝。凄すぎる室伏ファミリーは、日本選手権での勝利数が48になった。

 「凄いことですよねぇ。(連覇とは)別の意味でね」

 昨年のロンドン五輪は銅メダル。だが、五輪期間中の国際オリンピック委員会(IOC)選手委員選挙では違反があり、当選が無効に。スポーツ仲裁裁判所に訴えたものの無効は変わらなかった。この件については「一切コメントする内容はありません」とピシャリ。恋愛スキャンダルがあった指原に負けず、室伏も競技外のスキャンダルを乗り越えた。

 38歳の鉄人は肉体のメンテナンスを最優先し、実戦はロンドン五輪以来。最近は投てき練習に重点を置かず「ズールハーネ」というイスラム圏の古典的肉体鍛錬法に傾倒している。コンクリートで自作したこん棒を持ち上げるなど特殊トレーニングに打ち込み「道具を使うのは技術が必要。スキルがあればケガをしない」と持論を展開した。

 11年世界選手権で金メダルを獲得し、ワイルドカードで今夏の世界選手権の出場権は保持していた。大舞台について「コーチやトレーナーと相談してから」としたが、来年の日本選手権には意欲十分。「20連覇を目指したい」。そして、こう続けた。「でも、私を抜く人が出てくればいい。止める人が出るっていうのは凄くいいこと」。ハンマー界の“センター”に君臨し続ける王者は、ツブすつもりで向かってくる後輩を待ち望んでいる。

 ▽ズールハーネ ペルシャ語で「ズール」は「力」、ハーネは「家」。直訳すると「力の家」でイスラム圏の伝統的な肉体鍛錬法、またはその練習施設を指す。20キロ以上もあるこん棒や弓などを高く掲げたり、投げ上げてキャッチする。10年12月にはイランのズールハーネ・チームが来日し演武を披露した。

 ▽世界選手権への道 8月10~18日にロシア・モスクワで開催。参加標準記録Aを突破している選手が日本選手権で優勝すると代表に決定する。また、日本陸連が定めた派遣設定記録をクリアしている選手は、日本選手権で入賞すれば代表に決まる。他の代表は参加標準記録A、Bを突破している選手のうち、日本選手権で3位以内に入った選手から選考。10日に発表される。

◆男子ハンマー投げ
(1)室伏 広治(ミズノ)76メートル42
(2)野口 裕史(群馬綜合ガードシステム)70メートル11
(3)柏村 亮太(日大)67メートル07
[世]セディフ(ソ連)86メートル74
[日]室伏 広治 84メートル86
派遣標準記録 79メートル41 A標準=79メートル00、B標準=76メートル00

続きを表示

この記事のフォト

2013年6月10日のニュース