放駒理事長、苦渋の決断 クロ認定23人“追放”

[ 2011年4月2日 06:00 ]

会見中、険しい表情を見せる放駒理事長

大相撲八百長問題

 大相撲を揺るがした八百長問題で、日本相撲協会は1日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、特別調査委員会(伊藤滋座長)が関与を認定した23人の力士、親方への処分を決めた。内容は「引退(退職)勧告」「出場(出勤)停止2年」。事実上の角界追放を意味する厳罰で、弟子が八百長に関与した17人の師匠は降格処分とした。処分に対しては不満を漏らす力士、親方も多く、本場所の再開がいつになるかも現時点で不明。処分は下したが、相撲協会には問題が山積している。

 協会トップの目がかすかに潤んでいた。23人という前代未聞の処分が決まった印象を問われた時だった。放駒理事長(元大関・魁傑)は「自分たちの仲間の中から、これだけの人数を処分しなくてはならない。本当になんと言っていいか」と話すと、言葉に詰まった。ひと呼吸おいて「非常に重たい処分です」と、苦渋の決断であったことを吐露した。

 八百長問題が明るみに出た2月2日から丸2カ月となったこの日、全容解明を目指す調査委は予定を2時間前倒しにして午前7時から会合を行い、理事会へ提出する処分案をまとめた。午前10時30分からの理事会では、物証が乏しい中での処分に異論を唱える声もあった。しかし、放駒理事長は「相撲協会のモラルと良識が大変問われる問題。みなさん考えて判断してください」と訴え、各理事は「疑いをかけられた力士を土俵に上げるのはまずい」と“追放処分”を決断したという。

 調査委の伊藤座長は八百長への関与の判断根拠について(1)聞き取り調査の内容と態度(2)メールの解析結果(3)取組の映像(4)携帯電話の提出を求めた際の対応――の4つを挙げた。処分の「引退(退職)勧告」は八百長の処分規定では除名に次ぐ重い処分。相撲協会は引退届の提出期限を5日とし、放駒理事長は引退届を提出しない場合は除名か解雇とする考えを示した。

 調査委はほぼ調査が終結したと宣言し、八百長問題は一つの区切りを迎えた。だが、八百長問題が根絶したわけではない。再発防止策を審議する新生委員会の提言を待って夏場所開催を判断することになるが、監督官庁の文科省からは全容解明へのさらなる要求を受ける可能性もある。また、解散した「ガバナンス(統治)の整備に関する独立委員会」の最終答申案には「外部理事は半数以上」と記されている。北の湖親方(元横綱)ら理事3人が辞任したことで、外部理事が増える可能性も出てきたが、相撲協会はますますかじ取りが難しくなるとも言える。大きな決断に踏み切った相撲協会には、まだまだ障害が待ち構えている。

 ▼特別調査委員会・村上泰氏(弁護士) 力士生命を奪う非常に重い判断だった。裁判所でも(協会側が)耐えられるくらい、しっかりした判断をするというスタンスをとった。証拠は限られ、力士の供述に頼らざるを得なかった。

 ▽八百長関与者の処分 日本相撲協会の「故意による無気力相撲懲罰規定」によると、処分は軽い順から「けん責」「給与減額」「出場停止」「引退勧告」「除名」があり、日本相撲協会理事会で決定する。処分を受けた力士の師匠は連帯責任を負う。放駒理事長は、八百長と故意による無気力相撲は同義との見解を示している。除名処分は本来、親方や行司の代表による評議員会で出席者の4分の3以上の賛成が必要で、無気力相撲に適用する場合は理事会のみで決定できるが、今回は適用されなかった。

続きを表示

この記事のフォト

2011年4月2日のニュース