渋井 新戦法でV!涙の世界切符

[ 2009年1月26日 06:00 ]

満面の笑顔とガッツポーズでゴールする渋井陽子

 大阪国際女子マラソンは25日、長居陸上競技場発着42・195キロで8月の世界選手権(ベルリン)代表選考会を兼ねて行われ、前日本記録保持者の渋井陽子(29=三井住友海上)が2時間23分42秒で優勝して代表に内定した。これまでは前半飛ばして失速するレースが続いていたが、今大会は後半にペースを上げる新戦法で初マラソンだった01年1月の大阪国際以来、8年ぶりの国内V。昨年11月の東京国際からわずか2カ月という異例の挑戦で見事に最高の結果を出した。

 心の底から笑って、そして泣いた。ママさんランナーの赤羽を30キロすぎに振り切り、課題だった終盤も逆にペースを上げてそのままゴールイン。右手を突き上げてフィニッシュした渋井はそのまま鈴木総監督の胸にダイブした。途端に涙がこぼれ落ちる。「うれし過ぎてなんも言えねえ…。パクッちゃいました」。優勝会見では、いつもの“渋井節”で笑わせたが、レース内容は後半に大失速していたこれまでとは別人だった。

 前半は5キロを17分前半で刻むスローペースだったが、先頭に出たい思いをこらえて必死に我慢。「このペースにハマってしまったらどうしようという不安があった」という。だが「中間地点で鈴木総監督と目が合ってホッとした」と28・7キロ地点でようやく先頭へ。赤羽が食らいついたが31・5キロ地点で再びペースを上げて突き放した。残り10キロは前半にためたスタミナと北京五輪にも出場した一万メートルで培ったスピードを爆発させ、本来の実力を見せつけた。

 8年前、初マラソン世界最高記録(当時)の2時間23分11秒を叩き出して鮮烈なデビュー。04年には本物の日本記録も打ち立てるなど、マラソン人生は順調だった。だが、近年は前半に飛ばし過ぎて終盤に失速する展開が目立った。2カ月前の東京ではまたしても25キロすぎから失速して4位。あまりにひどいレースに「悔しさが残っているうちに走りたい」と再挑戦を決めた。東京の反省から、今回ばかりは勝ちにこだわった。

 12月25日から1月18日まで行った昆明合宿では8年前のビデオを見て勝利のイメージを膨らませた。「前回は行け行けドンドンでしたが、今回のテーマは抑えること」と作戦を変更した鈴木総監督は「渋井の競技生活を懸けるものがあった。完ぺきです」と振り返った。

 復活を遂げた29歳は最後まで“らしさ”を全開させ「ちょっとコツをつかんじゃった感がある。世界選手権?まあ…いけるかな」と笑った。進化した渋井が真夏のベルリンに挑む。

 ◆渋井 陽子(しぶい・ようこ)1979年(昭54)3月14日、栃木県黒磯市生まれの29歳。那須拓陽高出身。01年大阪国際で初マラソン世界最高(当時)の2時間23分11秒で優勝。04年ベルリンで2時間19分41秒の日本新(当時)を樹立。08年北京五輪は一万メートルで17位。1メートル65、47キロ。

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2009年1月26日のニュース