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サッカー界の八百長対策は…キーワードは「3R」

[ 2016年4月16日 12:50 ]

 プロ野球選手の関与で野球賭博がクローズアップされているが、サッカーはどうなっているのだろうか。残留争いをしているチームが、不正に勝ち点を得て降格を免れたり、ブックメーカーなどの賭けで不正な利益を得る。後者はマフィアの資金源になり、年間数兆円が動くと言われている。13年には世界70カ国で八百長が報告されているほど深刻だ。

 専門家によると、不正の仕掛け人は監督、コーチ、マネジャー、トレーナー、エージェント、引退した選手、家族ら。不正な利益を得る目的の場合は、選手にカネや豪華なプレゼントを渡したり、女性を紹介して巧みに近づく。信頼を得て、その後、脅したり、弱みを握って断りにくい状況を作り、不正を持ちかける。日本で賭博は違法だが、欧州ではブックメーカーで、仕組んだ試合に大きく賭けて不正に払戻金を得る。

 一方で監視も進み、ブックメーカーの賭け率などに異常があれば、すぐに当該リーグへ連絡が行く仕組みができている。Jリーグも契約しており、14年にJリーグの広島―川崎F戦でJリーグが契約している機関から「賭け率に異常が見られる」という警報が出て、Jリーグが対処したことがある。この時、不正は確認されなかったが、じん速に対処された。さらに、試合で不審な失点がないか、不審なプレーがないか映像でチェックする機関もある。

 近年、インターネットの普及で、「オンラインベッティング」が増加している。試合と同時進行で賭け、試合の勝敗ではなく「10分以内にPKがあるか」「どちらのチームが先にスローインを得るか」「どちらのチームが先にイエローをもらうか」などの経過を対象にしている。こちらも相当な金額が動いている。

 韓国Kリーグでは11年に大規模な八百長事件が発覚し、選手58人がサッカー界から追放になった。野球やバスケットボール、バレーボールにも波及した。担当者によると、チームのOBが巧みに近づき、「先輩の頼み」で不正に荷担していった。欧州や南米で行われる不正な賭けの対象試合のほとんどがアジア各国で行われている試合だという。Kリーグではスタンドで不審な行動をする人を監視している。留学生が「アルバイト」と勧誘されて、試合経過を国際電話で海外へ伝えていたケースもあった。

 Kリーグでは全試合を複数の専門家が見て、おかしなプレーがないかチェックしている。さらに警報が鳴った試合では、その旨を両チームに伝えて抑止する。さらに、全選手に対して毎年リーグの担当者が2度、クラブの社長が2度、1対1で面談し、おかしなプレーを見たことがないかなどの聞き取りをしている。さらに処分を重く厳格にすることで抑止し、365日24時間態勢で選手からの相談を受けるホットラインも設けている。

 既にJリーグはマニュアルも整備し、昨年10月には都内でJ1からJ3まで全チームの担当者らを集めた講習会を開催。海外の専門家や韓国Kリーグの担当者を招き、実情や手口などについて勉強会を行っている。海外の専門機関と契約して、Jリーグの試合のモニタリングや賭け率の監視も行っている。さらに、新人選手の講習会などで啓蒙活動を行い、各チームに担当者を置くことも義務づけている。八百長に対処するキーワードは、Recognise(理解する)、Resist(拒否する)、Report(報告する)の3Rだという。Jリーグも転ばぬ先の杖で、防止策を徹底させると同時に、厳しい抑止姿勢を見せてほしい。(大西 純一)

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2016年4月16日のニュース