高橋英樹 NHK・Eテレ「にっぽんの芸能」司会 「どこまで行っても修業」

[ 2021年12月30日 08:30 ]

1月1日放送のNHK・Eテレ「にっぽんの芸能 新春スペシャル」に出演する高橋英樹
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 【牧 元一の孤人焦点】好きこそ物の上手なれ、という言葉がある。NHK・Eテレの教養番組「にっぽんの芸能」(金曜後9・00)の司会を務める俳優・高橋英樹(77)には、まさに、この言葉がぴったり。1月1日正午から放送される新春スペシャルを前に高橋に話を聞いた。

 ──この番組での高橋さんの司会は親しみやすく説得力があります。
 「原点は、私自身が元々、伝統芸能が好き、歴史が好きだということです。私の師匠は2代目の尾上松緑で、歌舞伎は長いこと見て来ました。能や狂言は、歌舞伎ほどは見ていませんでしたが、この番組で触れることができて、とても興味深いです。趣味と実益を兼ねて司会を務めさせていただいているので、毎回、楽しい思いをしています」

 ──歴史の勉強がお好きなのですね?
 「勉強は子供の頃から好きでした。歴史を好きになったのは、役者になってから、歴史上の人物を演じる時、役作りのために、地方の郷土史家のお話をうかがったり、作家のお話をうかがったりしたことがきっかけです。歴史を学んで、いろいろな人物の点と線を結びつかせることに面白さを感じました。この番組には、芸能の原点に向かってどこまでたどり着けるかという面白さがあります」

 ──11月放送の番組の中で、聖徳太子と芸能の結びつきが感じられたのがとても興味深かったです。
 「単純に言うと、為政者には芸能が必要だったのです。どうしたら一般の人々に政治に興味を持ってもらえるかということを考えると、芸能がとても重要だった。昔から芸能を通じて政治が行われてきたという歴史的側面もあります。日本の文化を高めることは日本の国そのものを高めることにつながると考えています」

 ──この番組を見ていると、日本のことなのに知らないことが多いと感じます。
 「それをかみ砕いて、どうやって伝えていくかということを考えています。難しいことを難しいまま伝えても意味がない。『原点はこんなに面白い』ということをお伝えすることによって、より多くの接点が生まれる。その手助けになれれば良いと思っています」

 ──この番組の司会を始めたのは昨年4月ですが、この約1年半でご自身が学んだのはどんなことでしょう?
 「『物事全ては1日にしてならず』ということです。この番組に出演される方々は、それぞれが修業され、苦労を重ねられ、そして、認められて世に出て来られた。完成した人は一見、簡単そうにやっていますが、そこに至るまでの努力、日々の築き上げがどれだけ大変かということを改めて感じます。私もこの仕事を続ける上で、努力しなければいけない、頑張らなければいけない、と思います」

 ──「芸能」は、とても一般的な言葉ですが、実はとてもハードルの高いものなのだと感じます。
 「芸能に限らず、スポーツでも何でも、一流を極めるのは大変です。私自身のことを振り返っても、『日活ニューフェース』に3万人の応募があって、その中から男性5人、女性5人が選ばれましたが、結局、仕事を続けているのは私だけです。よく師匠の松緑に『どこまで行っても修業だよ』と言われました。確かに、その通りだと思います」

 ──元日の正午からの新春スペシャルの見どころは何でしょう?
 「野村萬斎さんに来ていただき、歴史的に積み上げてきた狂言の凄さ、狂言の未来をお伝えします。伝統芸能がこれから先も続いていくようにという願いも込めています」

 ──来年の抱負はいかがでしょう?
 「NHKに残る数多くの貴重な映像をどれだけお見せしていくか。新たに伝統芸能に挑む若い人たちをどう紹介していくか。その二つを考えながら、なお一層充実した番組にしていきます」

 さらに味わい深い司会を年明け早々から見ることができそうだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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