日野日出志氏が初絵本イベント 伊藤潤二氏とホラー両巨匠がタッグ作品?

[ 2019年6月30日 13:04 ]

ホラー漫画家・日野日出志氏(中)の初絵本発売イベントに駆けつけた伊藤潤二氏(右)と、文筆家の寺井広樹氏
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 「蔵六の奇病」「赤い花」などを描いたホラー漫画家・日野日出志氏(73)が29日、初の絵本「ようかい でるでるばあ!!」(彩図社)の出版記念イベントを東京・秋葉原の書泉ブックタワーで行った。ゲストに「富江」「うずまき」などの伊藤潤二氏(55)を招き、ホラー漫画界の2大巨匠の対談が実現した。

 「神様のような存在」と、日野氏への尊敬を口にする伊藤氏に対して「いえいえ。地獄の鬼です」と返答するホラーユーモアに、会場に集まった75人はニヤリ。両巨匠が創作秘話や、作家人生を明かす約1時間のトークに引き込まれた。

 伊藤氏が「小6の時に読んだ『毒虫小僧』に衝撃を受け、思春期には『赤い花』に興奮しました。日野作品は美へのこだわりがあり、大人になっても楽しめる」と日野氏への心酔を明かせば、日野氏は「デビュー作の『富江』を見て、凄い新人が出てきたと思った。ギャグと紙一重の発想…自分にもそういう部分はあるが、伊藤さんの絵はオレには描けない。すごくショックを受けた」と吐露。互いの作品に受けた衝撃を語った。

 日野氏にとって、今回の絵本は約15年ぶりの著書出版で「漫画では、かわいくなってしまいがちな私の絵を怖くするよう努力したが、絵本は逆。怖くなりすぎないように気を付けた」と、子ども向け絵本ならではの難しさを説明。伊藤氏は、絵本に登場する妖怪「大入道」について「目玉が怖いんですよね。いつもの日野先生らしく、血走った目にはしてませんけど、小さなお子さんにはトラウマになるかもしれませんね」と指摘した。

 グロテスクな絵柄や悲惨なストーリーが注目されてきた日野氏だが、デビュー当時に「日野日出志ショッキング劇場」とのあおり文句で売り出した出版社の意向に沿った面もあったという。「最初に描きたかったのは“怪奇と叙情”だったのに“ショッキング”でなければダメだと(その方向に)振られていった面もある。でも、それが結果的には良かったと今は思っている」と振り返った。

 その意味で、絵本への挑戦は原点回帰の意味もあるようだ。「呪縛から解放されたような気分もある。絵本のアイデアは幾つか浮かんでいる。まぁ出してくれる出版社があればの話だけどね」と、今後も絵本づくりを続けていく意向を示した。

 絵本づくりは伊藤氏も興味があるそうで「お話は頂いてます。まずは目の前にたまっている仕事を頑張って、絵本を描いてみたいと思います」と意欲をみせた。

 盛り上がった二人の口からは“コラボ作品”の計画も。話題が、日野ワールドの特徴の一つでもある「畳」になった際だった。畳の目一つ一つを書き込んだ濃密な絵から醸し出される不気味な空気感について、伊藤氏は「あれを再現しようと思ったんですができなかった」と明かすと、日野氏が「オレ、描きに行こうか?」と申し出た。「そんな!おそれ多くて、そんなことできませんよ」と遠慮する伊藤氏に「おもしろそうじゃん。時間のあるときなら」と日野氏は乗り気だった。

<ドキュメンタリー映画や博覧会も>日野氏の作家人生などを追ったドキュメンタリー映画「伝説の怪奇漫画家・日野日出志」の上映会が7月3日、東京・渋谷ユーロライブで行われる。同3日から14日には東京都中野区の「墓場の画廊」で、日野作品のキャラクターグッズを販売する「日野日出志のトラウマ博覧会」も開催。14日には日野氏のサイン会と撮影会が行われる。

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2019年6月30日のニュース