豊島八段先勝 持ち時間半分以上残し、午後のデザート前決着

[ 2018年1月9日 05:30 ]

第67期王将戦第1局第2日 ( 2018年1月8日    静岡県掛川市・掛川城二の丸茶室 )

第一局を制した豊島八段は「まずは1勝」とポーズ。大盤解説会に訪れた将棋ファンの祝福を受けた
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 豊島将之八段(27)が電光石火の攻めを見せ、88手で久保利明王将(42)に快勝した。1日目の封じ手時点(56手目)ですでに勝ち筋を確信。持ち時間を半分以上残し、必死に延命を探る王将を見事に仕留めた。終局は午後1時57分。午後3時のデザートより1時間も前という異例の決着となった。第2局は27、28日に佐賀県三養基郡上峰町の「大幸園」で行われる。

 しのつく雨が降り続く午後0時13分のことだった。若き挑戦者の72手目(第1図)。駒台の金を5九に叩きつけたその瞬間、天変地異に似たごう音が鳴り響いた。鉛色の天空が放ったひょうが対局場の屋根を荒々しくうがつ。王手ではないが、久保の王はこの一手でダメを押され縮み上がった。豊島の発した一撃が何らかのフォースを呼び込んだかのように。

 「最後まで積極的だったのが良かったと思います」。後手番ながらタイトル保持者を88手で投了に追い込んだ豊島はホッと息を吐いた。

 堂々たる戦いだった。振り飛車を操らせれば最強を誇る関西の先輩棋士に対し、あえて同じ戦法で挑んだ。「うまくいくかどうかは分からなかった」という。つい1カ月前のA級順位戦でも同じ作戦で臨みながら敗れているだけに、本来ならリスクがあり過ぎる。

 だが隠し持っていた秘策の28手目[後]4五銀を1日目に披露し、徐々にポイントを重ねていった。1時間21分の考慮時間を要した56手目の封じ手の場面では「詰むか詰まないかを考えていた」というから恐ろしい。

 「割と変化するところがなかった」という豊島に対し、久保は「変化の余地が多かった。攻めるところと守るところの選択肢が多くて時間を使ってしまった」と唇をかむ。午後2時前の終局を招いた大きな差はここにもあった。

 この日は後頭部の頭髪が2本のアンテナのように突起していた。国民栄誉賞受賞が決まったばかりの羽生善治竜王(47)を想起させる寝癖だ。あの重低音を呼んだフォースの発信源はこれだったのかもしれない。「自分にしてはうまく指せた。次もしっかり調整して頑張りたい」。先手となる次局は、いかなる超力を見せるのだろうか。

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