「美味しんぼ」掲載に至ったワケ「雁屋氏の考え 世に問う意義ある」

[ 2014年5月19日 05:30 ]

福島第1原発事故をめぐる描写が波紋を呼んでいる「美味しんぼ」。4月28日発売号(右)と5月12日発売号

 主人公らが東京電力福島第1原発を訪問した後に鼻血を出すなど、健康影響の描写が議論を呼んでいる漫画「美味しんぼ」(雁屋哲・作、花咲アキラ・画)を連載する「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)最新25号(19日発売)は「編集部の見解」を掲載。同誌の村山広編集長が掲載に至った理由を明らかにした。

 村山編集長は「健康に不安を抱えていても『気のせい』と片付けられて自身の症状を口に出すことさえできなっている方々、自主避難に際し『福島の風評被害をあおる、無神経な人たち』というレッテルを貼られてバッシングを受けている方々の声を聞きます」とした上で「その状況を鑑みるにつけ『少数の声だから』『因果関係がないとされているから』『他人を不安にさせるのはよくないから』といって、取材対象者の声を取り上げないのは誤りであるという雁屋哲氏の考え方は、世に問う意義があると編集責任者として考えました」と説明。

 さらに「『福島産』であることを理由に検査で安全とされた食材を買ってもらえない風評被害を、小誌で繰り返し批判してきた雁屋氏にしか、この声は上げられないだろうと思い、掲載すべきと考えました。事故直後に盛んになされた残留放射性物質や低線量被曝の影響についての論議や報道が激減しているなか、あらためて問題提起をしたいという思いもありました」と踏み切った。

 福島県の自治体や有識者の賛否両論を10ページにわたり特集。掲載への“信念”を表明するとともに「識者の方々、自治体の皆様、読者の皆様から頂いたご批判、お叱りは真摯に受け止め、表現の在り方について、いま一度見直して参ります」との姿勢も示した。

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2014年5月19日のニュース