【内田雅也の追球】間合いと一瞬を争う好試合 3連敗も落ち込む必要などない

[ 2023年6月11日 08:00 ]

交流戦   阪神3-4日本ハム ( 2023年6月10日    エスコンF )

交流戦<日・神>4回、前川の安打で生還した二走の大山(撮影・高橋 茂夫)
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 エスコンフィールド北海道では開門と同時に「テイク・ミー・アウト・トゥ・ザ・ボールゲーム」と『私を野球に連れてって』が流れる。練習中も試合の合間にも流れる。野球場へ出かける、浮かれた気分になれる。

 歌詞は野球好きの女性ケイティが彼氏にショー観劇ではなく、野球観戦に連れてってとねだる。「(家に)帰れなくたって構わない」と歌う。

 そう、野球はサッカーやバスケットボールなどとは異なり、時間制限のないスポーツだ。「このまま見ていたい」と好試合に身を委ねる。

 時の記念日だった。時間制限のない野球だが、間合いを楽しんだり、一瞬を争うプレーはいくらもある。そんな時間が流れた好試合だった。同球場最多の観衆3万2558人が大いに沸いた。

 3―3の8回裏、踏ん張っていた阪神先発・大竹耕太郎が決勝点を奪われるまでの打者3人、12球は1球ごとに固唾(かたず)を飲んだ。初めて敗戦投手となった大竹の無念を思うが、白黒決着がつくまで続投させた首脳陣、投げ通した姿勢は今後に生きるだろう。

 右前打で二塁走者が本塁に突入する間一髪も相次いだ。4回表は大山悠輔が生還、5回表は木浪聖也が憤死した。無念だが、相手の万波中正の好送球が上回ったのだ。

 7回表2死一塁で坂本誠志郎が放った左翼線ライナー性飛球も松本剛にダイビング好捕された。わずかの差だった。

 だからヘッドコーチ・平田勝男は相手をたたえたのだ。「相手にいい守備が相次いだ。万波のバックホームに松本剛の好捕。さすがに新庄は守りをきちんと鍛えているよ。特に外野手はね」。確かに新庄剛志の現役時代を思わせる好守だった。

 今季初の3連敗だが、落ち込む必要などない。敗れて潔し、平田は「勝てなかったが、長いシーズン、こういう時はある」と話した。「こちらに何かまずいプレーがあったわけではない。いいプレーもたくさんあった。バントもしっかり決められているしね」

 試合前のミーティングで監督・岡田彰布が珍しく全員を前に訓示した。「9連戦で疲れはあるだろうが、あと2つだ。みんなで力を合わせてがんばろう」。指揮官の声に応え、一丸姿勢も見えていたではないか。

 きょう11日は9連戦の最終戦だ。あの歌のケイティのように、北の大地の青空のように、明るく戦いたい。 =敬称略=
 (編集委員)

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