「近鉄戦士」は終わりじゃない! 現役続ける近藤一樹投手に注目の来季去就を直撃した

[ 2022年10月18日 12:00 ]

四国アイランドリーグplus・香川で、兼任コーチとしてプレーする近藤一樹投手
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 「最後の近鉄戦士」と呼ばれたヤクルト・坂口智隆外野手(38)が、今季限りで現役を引退し、ついに近鉄戦士がNPBプレーヤーから姿を消した。時代の流れを悲しむファンも多いが、まだ投手として投げている近鉄戦士がいる。四国アイランドリーグplus・香川で兼任コーチとして活躍する近藤一樹投手(39)だ。今季は13試合に登板し、なんと無失点の防御率「0・00」。来季も現役投手として投げるのか。注目の去就についてインタビューした。(取材・構成 鶴崎 唯史)

 ―近藤投手は、今季は13試合に登板し、2勝6セーブ。特筆すべきは防御率0・00という素晴らしい成績を収めた。体調も良さそうだ。
 「今季は、ボールも体の状態もすごく良かったので、数字も整いました。今季のボールは、ヤクルトで戦力外になったあの年(2020年)よりも、ボール自体は良い感覚、感触なんです。球速も140台後半が出るし、球自体も力めば、力んだなりのボールになる。数字が残ったことによって、続けないといけない体なのかなって。気持ちが一致しているかどうか、というところもありますが」

 ―今は率直にどんな思いを抱いているか。
 「正直、何のために現役をやるかな、という気持ちです。現役としてのゴールが見えてないんです」

 ―来年については。
 「最終的には、ゴールとしての現役生活が見えていない感じです。今は指導者というものが付いているので、だから続けている気もします。これが選手一本だったら、もういいかなと思っているかもしれないです」

 ―来季で22年目。これだけ投げ続けている投手も少ない。
 「不思議なことに、あんだけ肩肘痛い、痛いと言っていたのに、東京(ヤクルト)に移籍してから、痛さが出なくなって。“痛い”が出ないので74試合も投げられたし(ヤクルト球団の最多登板記録は、15年秋吉、18年近藤の74試合)。“痛い”が出ないので、結局辞めることもできず、不思議な感じです。歳を取れば取るほど、出力が落ちていくのではなく、「痛い」ところが無くなっていったんです。みんなみたいにバンバン走って、投げるというのはやめていますが、パフォーマンスも含めて色々コツを覚えてきたのでしょうけど、全力で投げても肩も肘も痛くないし、(痛かった若手時代は)何だったのかな、と」

 ―それこそ、投球の極意かもしれない。
 「先発ローテの時代に、この痛くない感覚が欲しかったな。これだけ体が言うことが聞くなら、『神経を痛くない方向に』とずっと考えなくてすみましたし、試合に集中できた。うまくいかないものですね」

 ―来季についてはまだ分からない。
 「基本は継続して、来年もここにいるんじゃないかな、とは思っています。あと1年、選手やるかな…。まだ決まっていませんが」

 ―投げたい気持ちが強い?
 「強いというよりも、どうせなら40になる年までやったから、というのも、区切れるかなと思って」

【最後の近鉄戦士が投げ続ける理由は指導者としての魅力も】

 ―この2年間で、指導者としての魅力を感じたことも原因では。
 「それは、めちゃめちゃ、ありますね。香川ではメーンは指導になっています。何で選手に指導できるか、というと、ケガしてきた自分の体、ケガした理由をたどっていく。自分を犠牲にしてきた今までが経験になっていて、ここで発揮するタイミングだったのかな、と。指導するにあたって、ちゃんと指導ができると感じています」

 ―コーチになって、成長したことも多い。
 「コーチの肩書きがついた去年は、試合中に、どこでタイムをかけて、マウンドに行こうか、とか今まで考えたことがなく、勉強になりました。外から試合を見ると“今タイムかけようかな”とか。今まで自分が先発や、中継ぎでピンチになったときに、何も気がつかなかったことが、外から一歩引いてみることができる感じです。もし、NPBで現役をやっているときに感じられたら、違う結果が出たかもしれないな。マウンドでは『全然、大丈夫』『こんなの間を空けなくても大丈夫だから』と思っていたけど、そういうマネジメント力が欠けていたから、先発としても長続きしなかったし、中継ぎとしてもピンチのときはピンチの成績を残していた。そのへん未熟でしたね」

 ―それを現役選手が感じるのは難しいこと。
 「ただ、一流として先発で活躍されている選手は、絶対に分かっている。“出し入れ”や“押す引く”は分かっているんです。何かを感じる能力がある。ずっと100%で1回から9回まで投げ続ければいいわけではないです。やっぱり一流の人は違うと思う」

 ―選手に伝える面白みを感じている。香川では球速が5キロ以上もアップした投手が何人もいると聞いた。
 「今までの経験が、今ここでいかされているし(香川を含めた独立リーグには)今まで指導されていない選手が多いんです。高校も大学も、クラブチームでも。キャッチボール1つ、アップから指導をしないといけないレベル。まだまだ足らない選手もいますが、でも、指導するとみんな意識を変えてくれることもありました。そこから指導しないといけなかったが、逆に楽しさはありました。球速がアップした投手も、たくさんいますね」

 ―もちろん、収入面などの苦労もあるが。
 「(単身赴任の香川と)二重で生活しているので、結局、かさばるところはかさばります。単身生活だと削るものばかりで。自分に対しての『投資』ではありますが、正直削られてしまうのは辛いところです」

 ―将来的には指導者に。
 「自分が今まで苦労してきたこと、苦労してきたからこその感覚とか、その人の苦しさを何となく理解してあげられそうな気がします。だからこそ、今一番必要なアドバイスができる、かもしれない。そうなれればいいなと。野球を一から教えるところに行くかもしれないし、結局、野球は抜けないのかな、と思っています」

 ―指導者として引き出しを増やしている毎日。
 「オリックス時代は先発で、ヤクルトでは中継ぎ。勝ちパターンだったり、ロングやったり、たまに守護神を代役ですることもありました。一流とは言えないですが、一通り、先発も中継ぎも後ろもやって、経験できた。どちらにしても指導者としての話はできるのかなと思います」

 ―来年以降もどうなるのか、楽しみにしています。また取材させてください。
 「きちんと結論が出たら、また、お話させて頂きますね」

 ◆近藤 一樹(こんどう・かずき)1983年(昭58)7月8日、神奈川県出身の39歳。日大三から01年ドラフト7巡目で近鉄入り。04年オフの分配ドラフトでオリックスに移籍し、08年自己最多の10勝。11年以降は右肘故障に苦しみ、14年オフの育成選手を経て、翌年4年ぶりの復活勝利。16年途中にヤクルトに移籍し、18年には球団タイ記録となる74試合に登板、最優秀中継ぎ投手賞のタイトルを獲得した。NPB通算347試合、43勝57敗、4セーブ、71ホールド。右投げ右打ち。

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