【内田雅也の追球】危うい序盤の「4-0」と、気になる「球際」の弱さ

[ 2022年4月20日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4-5DeNA ( 2022年4月19日    横浜 )

<D・神>4回無死、近本は宮崎の打球に飛びつくも捕れず(撮影・大森 寛明)
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 中学3年だった1977(昭和52)年、サッカーのテレビ解説で岡野俊一郎(後の日本サッカー協会会長)が「2点差は危ない」と話したのを覚えている。「1点ずつしか得点できないサッカーで2点差はすぐには追いつかれない。安全圏のように思え、どうしても油断が生まれる。そこで次の1点を失うと今度は焦りだす。もう勢いは逆転してしまっている」

 野球で言えば、ビッグイニングの4点差か、満塁本塁打でも届かない5点差か。序盤の4―0は危ういリードなのだ。

 元阪神監督の岡田彰布が<序盤3回までに4、5点リードした時が危ない>と著書『そら、そうよ~勝つ理由、負ける理由』(宝島社)に書いていた。<チーム内に「もう勝った」という空気が生まれる。これが危ない。「次の1点を失ったら流れが相手に行くぞ」と引き締めるのだが……>

 まさに、この夜の阪神である。2回表で4―0。油断や「もう勝った」の空気がなかったか。開幕戦で7点リードから逆転負けを喫し、泥沼の連敗地獄に落ちたチームだ。なかったと信じたい。

 だが今季過去3試合、22回2/3でわずか1失点だった西勇輝が5回途中5失点で降板となった。前回5日(甲子園)に完封したDeNAは、右打者が中堅から反対方向を意識した打撃で対抗し、リベンジにあったわけだ。

 守備ではグラブに当てながら安打にしたケースが相次いだ。2回裏無死満塁、田中俊太のゴロは西勇が弾いて遊撃内野安打となった。4回裏先頭、宮崎敏郎の中越え二塁打は近本光司のグラブからこぼれた。5回裏先頭、大田泰示の左翼線二塁打もメル・ロハスのグラブに当たっていた。すべて失点に絡んだ。

 いずれも捕れば美技の打球だが、弱い「球際」が気になった。球際は巨人V9監督、川上哲治の造語で相撲の土俵際から採った。<要は土壇場ぎりぎりまであきらめない、粘り強いプレーのことである>と著書『遺言』(文春文庫)にある。

 球際はボールとグラブだけでなく、ボールとバットでも言える。打線は3回以降、救援6投手に2安打8三振で無得点。粘り強さはうせた。9回表も送りバント失敗に「GEDP」(ゲーム・エンディング・ダブルプレー)。リクエストもむなしかった。 =敬称略=(編集委員)

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2022年4月20日のニュース