東尾修氏 引退・松坂への思い 入団時の「200勝ボールの約束」かなわなかったけど…

[ 2021年7月8日 05:30 ]

西武・松坂大輔 今季限りで引退

松坂(右)と東尾修氏
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 大輔から電話をもらった。「右手の指の感覚がなくなった」ということだった。私が200勝のボールを渡し、大輔の200勝ボールをもらうという入団時の約束はかなわなかったが「ボールは持っといてくれ」と伝えた。日米通算170勝。私のボールを手に、いつか共に戦ったことを思い出してくれればいいし、届かなかった30勝分は今後の野球界への貢献で返してもらえればいい。「お疲れさん」。これが、今の率直な思いだ。

 入団して初めて見た99年1月の新人合同自主トレでのキャッチボール。左足首と左膝が硬いとすぐに感じた。メジャーに行った時、硬いマウンドで負担が増さなければいいなと感じていた。09年夏、レッドソックスのキャンプ地、フォートマイヤーズでリハビリを行っていた大輔を激励した際に「WBCで股関節を痛めて投げていた。そのクセが抜けない」と聞かされ、その時に他の部分に故障の負担が出なければいいなと思ったが、その悪い予感はことごとく当たってしまったな。

 身長は1メートル82。体は決して大きくない。だが、彼の打者に向かっていく姿勢、ピンチでのギアチェンジ、そして西武監督時代に150球を超えても「いけます」としか言わないその馬力こそ、彼の魅力だった。99年のイチローとの初対戦の際、そのあまりの気迫に「おまえ、イチローと戦うんじゃない、勝たせることが大事だ」と諭したことも、今ではいい思い出だ。

 今は、ゆっくりと体を休め、次への活力にしてください。(95~01年西武監督。スポニチ本紙評論家)

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