唯一無二の存在「二刀流・大谷」 エンゼルスがぶっつけ復帰登板を選択した理由

[ 2018年9月4日 09:00 ]

<アストロズ・エンゼルス>メジャーのマウンドに復帰し力投する大谷(撮影・会津 智海)
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 エンゼルスの大谷翔平投手の投手復帰については、米メディアの中でも様々な議論がなされている。「プレーオフ進出の可能性がないのに、投手復帰させる必要はない」「マイナー登板を経ないでメジャーの舞台にぶっつけ登板するのはリスクがある」などである。好調な打撃を見て「今季は打者でいいのでは」というものに加え「先発よりも救援復帰の方がリスクは少ない」といったものもある。

 だが、どうもしっくりこない。どの論調も、二刀流選手という観点からの指摘ではないからだと感じたからだ。投手の立場からすれば、しっかりとマイナー戦で段階を踏んでいくべきだと考えるだろうし、打者側から見れば、打者に専念して投手復帰のリスクを背負う必要はないと感じるのだろう。でも「二刀流として」の立ち位置で考えるとどうか。「常識を疑え」とは言わないが、投手ではこう、打者ならこうという各論を唱えるのは、あまり大谷にとって意味をなさないと感じる。大谷も過去に「決まった調整をしなきゃいけないと考えることはなくなった」と話している。

 ビリー・エプラーGMが「大谷は投手でも野手でもない。二刀流の選手だ。その観点を失うことはない」と話す。二刀流としての日々を取り戻すことが、大谷という選手の本当の姿だと考えれば、ぶっつけメジャー復帰も否定すべきことはない。本人も同意したのなら、なおさらだ。

 それでも、球数50〜60球の制限付きでメジャーの舞台で復帰登板させるというのは、かなり特別なのは確かだ。かつて、日本人メジャーリーガーで「いつでもメジャーの舞台で投げられるのに、慎重すぎる」と言ったリハビリ中の投手の本音も耳にしたことがあるから、なおさらだ。だからこそ、「二刀流・大谷」という唯一無二の存在の未来をエンゼルスが大事に、そして真剣に考えていると、私は好意的に解釈している。

 メジャー通算555本塁打を放って、四国アイランドリーグの高知でもプレーしたマニー・ラミレス氏がレッドソックス時代に異端児であることを問われて言ったことがある。「過去に例がないとか、史上何人目とか私にとってはどうでもいい。私はマニー・ラミレスだ。私とすべてが同じ人間は過去も未来もいない。批判は過程ではなく、結果に対してだけにしてほしい」。大谷の残り1カ月の二刀流としての歩みを、素直に見て行きたいと考えている。(記者コラム・倉橋 憲史)

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2018年9月4日のニュース