イチローばり!プロ注目仙台育英・上林 ワンバン曲打ち

[ 2013年3月26日 06:00 ]

<創成館・仙台育英>2回2死満塁、仙台育英・上林はワンバウンドの投球をすくい上げて右中間へ2点二塁打

第85回センバツ高校野球大会第4日2回戦 仙台育英7―2創成館

(3月25日 甲子園)
 2回戦3試合が行われた。第1試合では仙台育英(宮城)が創成館(長崎)を7―2で下し、センバツでは準優勝した01年以来、12年ぶりの勝利を挙げた。今秋ドラフト候補の4番・上林誠知(せいじ)外野手(3年)は、ワンバウンドする球を二塁打にする曲芸打ちを見せた。第2試合では早実(東京)が龍谷大平安(京都)との伝統校対決を制し、3回戦進出を決めた。

 究極の秘打だ。ドカベンの岩鬼でもこんなうまく打てない。今秋のドラフト候補、仙台育英・上林が甲子園を驚かせた。何とワンバウンド投球を二塁打にしたのだ。

 「自分でもびっくりしてます。スライダーが来ると思っていて、うまく反応できた。(インパクトが)ワンテンポ遅れてパパンッ!て感じ」

 2回2死満塁。1ボール2ストライクから創成館・大野が空振りを狙ってホームベース手前に落とした116キロスライダーだった。狙い球を打ちに行った上林のバットは止まらない。ただ、目はボールから離さない。ヘッドを遅らせて、ゴルフスイングのように「合わせた感じ」の打球は右中間へ。上林は快足を飛ばして二塁を陥れた。

 一塁ベンチの仲間たちから「すげえー」の声が漏れ、打たれた大野はぼう然だ。「狙い通りにベースの手前に落とした球。他の打者なら空振りしてる」。ワンバウンドヒットと言えば00年のイチロー。その映像を「テレビで見た」という。ただ、イチローは右前打で上林は二塁打。佐々木順一朗監督が「彼はイチローっぽいところがある」と天才肌の主砲を評したように、偉大な天才打者にも劣らぬ秘打だった。

 チームにも価値ある2打点だ。どんな形でも走者を還す。4番で主将の自覚がそこにある。冬場に1メートルの長いバットでティー打撃を行い、1日1000スイング。その成果は、崩されてもボールを拾えるバットコントロールに表れた。守備でも4回に超美技。でも、笑顔はない。花粉症のはなをすすりながら「きょうは力んで、突っ込んで全然駄目。反省したい」。

 昨夏の甲子園3回戦(対作新学院)では自らのエラーで敗れた。雪辱の春。秘打だけでは足りないのは分かっている。

 ◆上林 誠知(うえばやし・せいじ)1995年(平7)8月1日、埼玉県生まれの17歳。小1から野球を始め、土合中では浦和シニアに所属して3年時に全国大会優勝。仙台育英では1年秋から4番を務め、昨夏も甲子園に出場した。1メートル84、77キロ。右投げ左打ち。

 ◇イチローのワンバウンドヒットVTR 00年5月13日のオリックス―ロッテ戦(神戸)の初回、後藤の投じた125キロフォークはホームベース手前でワンバウンドしたが、これをイチローがゴルフスイングのように捉えて右前打。「珍しい?そうですね。過去にはないです」と振り返った。プロ野球でワンバウンドを打った伝説の打者といえば、日本球界初の3冠王・中島治康。「ボール打ちの名人」と呼ばれ、ワンバウンドを本塁打したのが語り草となっている。

 ▼西武・鈴木葉留彦球団本部長 ワンバウンドの球を打てたのは、バットのヘッドが落ちないから。力はあると思う。

 ▼DeNA・吉田孝司スカウト部部長 いいものを持っている。去年の夏より体の芯が強くなっている。

 ▼巨人・山下哲治スカウト部長 体が一回り大きくなった。順調にいけば上位指名される素材。足もあるし守備範囲も広い。

 ▼創成館・坂井捕手 完璧にホームベース手前で落とした球。空振り狙いのフィニッシュボールをあそこまで飛ばされたのは見たことないです。

 ▼創成館・稙田監督 あんなヒットは見たことがないです。(投手の)大野もびっくりしたでしょう。ただ、上林君はスイングも打球も速い。

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