スノボ金メダル筆頭候補・村瀬心椛 舞い上がる2つの「てっぺん」 ミラノ・コルティナ五輪まであと半年

[ 2025年8月6日 04:20 ]

日の丸を指に笑顔の村瀬心椛(撮影・岸 良祐)

 来年2月6日のミラノ・コルティナ冬季五輪開幕まで、きょう6日でちょうど半年。スノーボード女子スロープスタイル(SS)とビッグエア(BA)で、金メダルの筆頭候補に挙がるのが村瀬心椛(ここも、20=TOKIOインカラミ)だ。スポニチの単独取材に応じ、「てっぺん」への思いを語った。(阿部 令)

 五輪プレシーズンの世界選手権でSS銀メダル、BA金メダルというほぼ完璧な結果を残して4カ月あまり。金メダルの有力候補としてミラノ・コルティナ五輪に臨む村瀬だが、「金メダル」という言葉はめったに口にしない。代わりに頻繁に発するのが「てっぺん」だ。

 「よく言ってますよね。何でなのか、分からないですけど、自分でも思ってました。あ、また言ったなとか」

 13歳でXゲームを初制覇し、17歳100日で出た22年北京冬季五輪ではBAで男女通じて日本勢初の表彰台となる銅メダルを獲得。浅田真央さんが持っていた冬季五輪の日本女子最年少メダル記録も更新した。「それまでのケガだったり、つらかったことが全部思い浮かんで、はあ~みたいな」。味わったことのない喜びが全身を貫いたが、少し時間がたつと、悔しさとともに、別の感情が湧き上がったという。

 「膝が痛い」。18年12月、大会直前の練習で右膝蓋(しつがい)骨を骨折。「レールに思い切りぶつけた。(膝蓋骨が)Yの字に割れて、裏側もボロボロだった」という古傷は、術後も痛みが完全に消えることはなかった。当初は入れっぱなしの予定だったボルトを除去しても治まらず、「飛行機や雨の日は痛くなった」。メダルを獲りながらも、喜びよりも痛みが村瀬の感情を支配した。

 その心の叫びを、遠く離れた日本で拾った人物がいた。ラグビー元日本代表の堀江翔太さん。自身も首のケガで一時は握力が10キロ以下に落ちる選手生命の危機を迎えたが、手術とリハビリを経て復活。術後7カ月で迎えた15年W杯では歴史的3勝の立役者となった。若いアスリートを助けたい。ほとんど無意識のうちにインスタグラムで自身を復活へ導いてくれた佐藤義人トレーナーを紹介するメッセージを送ったという。

 「絶対に良くなるという熱いメッセージを頂いたので、行くしかないと」。幸いにも村瀬は堀江の存在を認知しており、何よりわらにもすがりたい気持ちだった。シーズンを終えると佐藤氏の元を訪れ、リハビリとトレーニングを開始。痛みが解消した後は体づくりに一から着手。「運命というか、凄く恵まれているなと思った」という出会いがなければ、その後の活躍は語れない存在となった。

 23年9月、ニュージーランドの雪上練習で女子史上初となるトリプルコーク(TC)1440(斜め軸の縦3回転、横4回転)に成功すると、同12月のW杯決勝では3本全てでTCを含む技に成功し、197点(満点は200点)という究極のハイスコアで圧勝。国内外のライバルが追随している現状でも、「その中でも一番カッコいいんだよと(思わせる)。一番最初にやったので、それを貫き通したい」と、先駆者としてのプライドは人一倍強い。

 技の難度や回転数が限界に近づく中、「スタイル」づくりにも着手してきた。「女の子らしい滑りと男らしい滑りは圧倒的に違う…何でしょうね、スタイルって。分からなくなりました」と明確な答えや目指す方向性は定まっていないが「(滑りが)男だねって言われたら、凄くうれしい」という。ウエアは上着がMでもボトムはXOで太見せ。オフはバックカントリーに繰り出し、自然から滑りのインスピレーションを得てきた。全ては「村瀬心椛」オリジナルのスタイルを築くために。

 「誰かを目指すのではなく、自分自身の滑りを目指す。大谷さんも言ってたじゃないですか。“憧れるのをやめましょう”って。確かにそうだなって。他人にとらわれないように、ちゃんと自分の芯を持って」

 半年後、目指すは2つのてっぺんだ。誰のまねでもない、誰にもまねできない滑りで。

 ≪国内外に強力ライバル≫村瀬にとって金メダル争いの最大のライバルが、BAで五輪2連覇中のアナ・ガサー(オーストリア)と、北京五輪でSS金、BA銀とメダル2つを獲得したゾイ・サドフスキシノット(ニュージーランド)だ。33歳のガサーは3月の世界選手権では表彰台を逃したが、大一番に強く、新技を温めている可能性がある。サドフスキシノットは世界選手権のSSで村瀬を抑えて優勝しており、SSでの安定感は群を抜く。国内では岩渕麗楽(バートン)、深田茉莉(ヤマゼン)も強力なライバル。本番ではBA決勝が来年2月9日、SS決勝が同17日に行われる。

 ◇村瀬 心椛(むらせ・ここも)2004年(平16)11月7日生まれ、岐阜市出身の20歳。4歳でスノーボードを始める。18年5月、ノルウェーで開催されたXゲームを当時13歳で初出場初優勝。22年北京冬季五輪はBAで銅メダル。W杯は通算7勝を含む表彰台17回。今年3月の世界選手権はSSで2位、BAで優勝した。TOKIOインカラミ所属。スタンスはレギュラー、使用ボードはサロモン。妹の由徠(ゆら、18)も同じ所属のトップ選手で、姉妹同時出場を目指している。

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