大の里も出場した「ワールドゲームズ」相撲除外の真相…国際化が進む「国技」五輪競技化への希望と課題

[ 2025年7月19日 07:05 ]

第12回ワールドゲームズ中国・成都大会のポスター(撮影・前川 晋作)
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 ワールドゲームズ(8月7日開幕、中国・成都)の日本代表選手壮行会が18日、東京都内で開催された。ワールドゲームズは五輪に採用されていない競技種目の国際総合競技大会で、4年に1度、夏季五輪の翌年に開催されている。今大会は12度目の開催で、公式32競技、その他2競技が実施される。

 日本の国技「相撲」は、今大会の実施競技から除外されている。2001年の秋田大会で公開競技として初めて実施され、正式競技としては2005年のデュイスブルク大会から2022年のアメリカ・バーミングハム大会まで5大会連続で行われていた。2022年の前回大会では、のちに「大の里」として大相撲の史上最速横綱に駆け上がる中村泰輝(当時日体大4年)が男子無差別級で世界一に輝くなど、男女2人ずつ計4人が金メダルの大活躍。日本選手の出場全21競技で獲得した金メダル10個のうち4個を相撲が占めており、アマチュア相撲が日本の“お家芸”として国内外で大きな注目を集めた。さらにアメリカでの人気も高く、全競技の中で真っ先にチケットが完売したという情報もあった。

 その「相撲」がなぜ今回の実施競技から外されてしまったのか。理由の一つに、前回大会で発生したある“事件”が挙げられる。男子軽量級決勝、エジプト代表のエルセフィーがウクライナ代表のカラチェンコを破って優勝を決めた。しかしこの直後、過度なパフォーマンスで審判から再三注意を受けていたエルセフィーが制止を振り切って喜びを爆発させ、土俵上で後方宙返り。「過度なパフォーマンスをした場合は負けになる」というルールは相撲競技規定に存在しないが、その時の審判は一旦、エルセフィーを“反則負け”とした。すると、エジプト代表コーチの元幕内・大砂嵐らが猛抗議。立ち入り禁止とされる土俵付近まで詰め寄って大暴れしたため警備員に止められる騒動となった。結局取り直しとなり、エルセフィーが再び勝って優勝。しかし、事態を重く見た国際ワールドゲームズ協会からすぐに問題視され、エジプト代表選手は全員翌日の無差別級に出場停止となり、コーチ陣も含め“出禁”となった。

 騒動はこの日だけで収束せず、大会後にも国際相撲連盟が国際ワールドゲームズ協会から呼び出される事態に。この時点で、次回大会(2025年)の実施競技から除外されることは避けられない状況となった。国際相撲連盟ならびに日本相撲連盟は、改善策に着手。すぐに国内大会で規律委員を立ち上げ、ガッツポーズの禁止を徹底するなど土俵マナーの遵守に努めた。立ち合いについては、2024年度から「両手を同時について」「引きますよ」の合図で立つという大きなルール変更があった。ワールドゲームズの前回大会に同行していた日本相撲連盟関係者によると、立ち合いの正常化もこれらに関連した“改善策”の一つだったという。

 ワールドゲームズの実施競技では、2028年ロサンゼルス五輪の追加競技のフラッグフットボールやラクロス、過去にはバドミントンや空手、ダンススポーツ(ブレイキン)など、これまで計16の競技がのちに五輪競技として採用されている。五輪への“登竜門”とも言えるワールドゲームズの実施競技から除外されることは、国際化や世界的な競技人口の増加、そして五輪競技採用を目指している相撲にとっては大きな痛手となるだろう。

 しかし、除外の理由はこの“事件”だけではないという。もともとワールドゲームズは低予算での開催を推進しており「既存施設で開催できない競技種目は開催しなくてよいという」という決まりがある。相撲が盛んな香港や台湾に比べ、中国本土はあまりなじみがない。そのため、開催地側が相撲の実施をそれほど強く要望しなかったのではないかという指摘もあった。次回の2029年大会はドイツ・カールスルエで開催される。日本ワールドゲームズ協会の理事によると、次回大会では相撲が実施される方向で進んでおり、既に国際ワールドゲームズ協会の了承も得られているという。

 男性のみが体重無差別で争う「大相撲」とは一線を画す「アマチュア相撲」。階級別や女子選手の参加など、大相撲とは別の魅力が知られるようになり、近年急速に普及・発展を遂げている。日本相撲連盟では女性を40%以上理事に登用しており、女子相撲の人気も相まって現在は男女平等の競技として世界的にも認知されるようになった。その中で、さらなる人気の向上には五輪競技化が一番の特効薬であると考えられる。日本相撲協会を先月退職した元横綱の白鵬翔さんが「相撲グランドスラム構想」を打ち出してアマチュア相撲の普及に力を入れるなど、今や「相撲の国際化」はトレンドの一つ。五輪競技化というアマチュア相撲界の悲願が、近い将来に実現される可能性は十分にありそうだ。

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