鏡優翔 浜口京子が届かなかった最重量級の金メダル 3月の肋骨骨折ピンチ救った藤波のカラオケ動画

[ 2024年8月11日 21:20 ]

パリ五輪最終日 レスリング ( 2024年8月11日    シャンドマルス・アリーナ )

<パリ五輪・女子76キロ級決勝>金メダルの鏡は大喜び(撮影・岡田 丈靖)
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 女子76キロ級の鏡優翔(22=サントリー)が11日、決勝でケネディアレクシス・ブレーデス(米国)を3―1で下し、金メダルに輝いた。日本女子レスリング界の歴史に新たな一ページを記す最重量級での快挙。これでパリ五輪の日本人選手が出場するメダルマッチは全て終了し、メダルラッシュに沸いた今大会を締める45個目のメダルを金色に染めた。

 マウスピースには「カワイイ」の文字を記し、髪とネイルを五輪カラーに染めた鏡の女子最重量クラス史上初の快進撃。決勝の舞台でも明るさのスピードとパワー。自分の持てる全てを出し切り、同じく快進撃で決勝まで来た米国の20歳期待の新星を撃破した。

 レスリング競技最期を飾る最強決定戦。その名にふさわしい緊迫した序盤。まずは鏡が1ポイント先取。開始2分には場外に押し出され1―1となり前半が終了した。勝負の第2ピリオド。残り1分30秒で鏡が動いた。片足タックルから一気に場外へ投げ飛ばす。3―1。米国の新星の攻撃を最後まで交わし、勝負を決めた。

  笑顔はじける金メダル。前田コーチを担ぎ上げ日の丸を掲げ歓喜のウイニングラン。最後はコーチをマットに投げ捨て会場を沸かせた。吉田沙保里を彷ふつさせる肩車も披露。その後、スタンドの両親や兄と喜びを分かち合い、仲間とハイタッチを交わし、最後に藤波が下りてくると2人で号泣。約束の金メダルをつかんだ2人は、強く強く抱きしめ合い泣き続けた。

 昨年の世界選手権、女子最重量級では03年の浜口京子以来、20年ぶり2人目の世界王者に輝いた。その浜口が3度挑戦して届かなかった五輪金メダルへ、自信を持って五輪イヤーを迎えたが、3月には肋骨を骨折して予定していた国際大会を欠場。さらに5月には右膝内側側副靱帯(じんたい)を損傷。普段は大好きなひまわりのように明るい性格だが、直後は人知れず、号泣した。

 ただ、転んでもタダでは起きないのが鏡の凄さだった。リハビリ期間中は上半身を徹底的に鍛え、上腕の力は大きくアップ。仲のいい藤波朱理が3月に右肘を故障した際には「神様はつらいことを乗り越えた後に、輝かしい景色を用意しているよ」と伝えたが、自身が故障すると同じメッセージと共に、カラオケ動画を送られ励まされた。本格的な練習再開は7月以降。突貫工事となったが、大会最終日にピタリと照準を合わせた。

 ◇鏡 優翔(かがみ・ゆうか)2001年(平13)9月14日生まれ、山形県出身の22歳。東京・帝京高、東洋大を経て今年4月からサントリー所属。高校3年間はJOCエリートアカデミーにも所属。現在は東洋大大学院にも通う。宇都宮市に転居した小1の時に下野サンダーキッズで開始。高2だった18年に全日本選手権を初制覇。昨年の世界選手権では女子最重量級では03年の浜口京子以来、日本勢20年ぶりの優勝を果たし、パリ五輪代表に内定した。

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