【柔道】「おまえは柔道の偏差値だけは高いな」斉藤立の恩師が感じた、仁さんの“遺産” パリ五輪

[ 2024年8月3日 07:20 ]

パリ五輪第8日 柔道 ( 2024年8月2日    シャンドマルス・アリーナ )

斉藤仁さんがしたためた座右の銘「剛毅木訥」の書と手形を収めた額が飾られた一室で、教え子である立のことを語った岩渕公一氏
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 男子100キロ超級で初出場の斉藤立(22=JESグループ)が5位に終わった。84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪の同95キロ超級を連覇し、15年1月に胆管がんのため54歳で亡くなった父・仁さんの国士舘高時代終盤の恩師であり、立も3年間指導したのが、岩渕公一氏(69、現国士舘中高校長)だ。

 生後間もない頃からの立を知り、高校3年間は直接指導、その後も折に触れて助言を送ってきた岩渕氏は、仁さんが亡くなる直前の14年末、「立、お願いします」と託された。「自分の中では斉藤と約束したと思っているので、1人前にしないといけないと思った」と使命感に燃えて、指導に当たった。

 仁さんから英才教育を施された立に、ある時「おまえは柔道の偏差値だけは高いな」とほめたことがある。組み手、立ち技、寝技など技術指導をすると、「あ、これはお父さんに教わったことがあります」と言葉が返ってきたからだ。例えれば高校卒業までの教科書を、小学校で学び終えてしまったレベルの知識を誇った。父子の高校時代を比べ、「技は立がはるかに上」と回想する。

 04年アテネ五輪の鈴木桂治、08年北京五輪の石井慧と、2人の五輪最重量級王者も育てた岩渕氏。3人の比較に話題が及ぶと、立については「桂治ほどのセンスはない。石井のストイックさはないが、立は柔らかくて力強い。そこをもっと生かさないといけない」と語る。惜しまれるのは鈴木、石井が大学4年間で仁さんに徹底的に鍛え上げられたのに対し、立にはその経験がないこと。「一定期間は“鬼”から指導を受けた。立にはそれがない」と早世を悔やんだ。

 高校時代はヤンチャな面もあり、学校生活で調子に乗れば「徹底的に叱った」という。一方で3年間で一度も講道館杯を勝てず、「恩返しのために優勝したかったと言って、ぼかぼか自分の頭を殴り始めた。そういう面もあるんだと」と報恩の精神には感心したという。

 「完成度は正直、足りていない。本当はあと1、2年はほしい」と語る状態で臨んだ初の五輪は、メダルを逃した立。これからも仁さん“最後の弟子”に寄り添い、五輪最重量級王者に育てていく。

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