“ティア1”になった日本代表が、これから果たすべきこと

[ 2023年9月14日 11:02 ]

<日本・チリ>初戦を快勝した日本代表(撮影・篠原岳夫)
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 開幕週は、怒濤(どとう)の3日間だった。3日で計8試合、より強調すれば50時間で実に10時間40分間はラグビーを見ていた。過去2大会は現地で取材したが、今大会は国内からの後方支援。現地フランスの熱気を肌で感じることはできないが、画面を通じて、4年に一度の舞台に懸ける選手の熱さは伝わってくる。

 W杯の特別感は、プレスサイトの情報量からも伝わる。トピック記事や写真、参加全20チームの事細かなスケジュールや試合前後のデータ類、会見の映像や発言内容を書き起こしたものまで、ひっきりなしに更新され、情報の波に飲まれそうだ。そんな中で、日本がチリと対戦する2日前の9月8日、プレビューレポートの一節を見た瞬間、「おおっ」と小さく声が漏れた。その内容はこうだ。

 Japan’s maul has not been functioning well in 2023, they’ve had the lowest success rate (71%) and averaged the fewest maul metres per game of any Tier 1 nation this year (0.8m/game).

 ざっくりと訳せば、日本のモールは今年、ティア1チームの中で最も機能していない、といったところか。5月に国際統括団体ワールドラグビー(WR)からハイパフォーマンスユニオン(HPU)として認められてから4カ月。呼称は旧来の「ティア1」だが、WRの発信するニュースや資料の中で、初めて日本がティア1であると明記する文言を見た。

 10日のW杯初戦。レポートの通り、モールは格下のチリにも機能しなかった点は不安を残したが、ボーナスポイントを含む勝ち点5を獲得した試合内容と結果は、合格点を与えられるものだった。旧来のティア1と日本を合わせた世界11のユニオン(協会)のみが認められたトップカテゴリーの国として、まずは意地を見せたと言ったところか。

 次戦は17日(日本時間18日)にイングランドと対戦。そして少し気が早いが、イングランドとは来年6月22日に日本国内で対戦することがすでに決まっている。その4カ月後の10月26日には、ニュージーランドとの対戦も控える。こちらの対戦は両国が連携に関する覚書を締結したことも大きいが、HPUとして、紙の上での立場が対等になったからこそ、実現した面はあるだろう。来年はその他にも計5試合程度、他のHPUとのテストマッチが行われる予定だ。

 では、果たすべき責務とは何か。今回のW杯で結果を残すことはもちろんだが、来年以降の“平場”のテストマッチでも、しっかりと白星を積み重ねることではないか。日本は19年大会後、対ティア1戦で11戦全敗(全英&アイルランド代表戦を含む)。ティア2なら許されていた敗戦も、今後は世界のラグビー界をリードするグループの一員として、もっと厳しい目が向けられる。何よりも対戦相手にとっても、その試合が強化に資するものにしなければならない。競争相手として認められたからこそ、伝統国の“サロン”に加わったからだ。

 HPUとしては若葉マークの日本が着手すべきことは、まだまだたくさんあるだろう。肝となる代表の強化継続はもちろんだが、その基盤となる若年世代の強化と普及、そして代表へのパスウェイをもっと整備にしなければ、競争力を継続することはできない。

 こんどのイングランド戦、過去10戦全敗の日本が勝てば、「金星」であることは間違いない。その先の目標は、名実ともに平幕を卒業し、大関、横綱として「金星」と言われない立場まで上り詰めることだろう。(記者コラム・阿部 令)

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