SHIGEKIX 涙のブレイクダンス全日本3連覇 新競技パリ五輪も注目!第一人者の20歳「ホッ」

[ 2023年2月20日 04:40 ]

ブレイクダンス全日本選手権最終日 ( 2023年2月19日    東京・代々木第2体育館 )

<第4回全日本ブレイキン選手権>オープン男子決勝、優勝を果たすShigekix(撮影・会津 智海)
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 決勝トーナメントが行われ、男子は昨年世界選手権準優勝の半井重幸(20=ダンサー名SHIGEKIX)が3連覇を達成した。24年パリ五輪での新競技採用で注目度がアップする中、重圧に打ち勝った。女子は福島あゆみ(39=AYUMI)が2連覇。男女とも決勝トーナメントに進出した8選手が23年度の強化選手に内定。パリ五輪代表争いに関わる国際大会へ優先的に派遣される。

 決勝の第1ラウンドを終えると、Tシャツ姿のSHIGEKIXが黒の上着を身にまとった。腕を滑りやすい状態にして、直後の第2ラウンドでオリジナル技「ホールド・ドリル・トゥ・Aトラックス」を披露。頭で回りながら手で足を持ち回転軸をずらす高難易度のスピンで、過去最多約3000人の観衆を集めた会場を沸かせた。優勝が決まると顔をタオルで覆い涙。20歳の第一人者は「ホッとした気持ちとうれしい気持ち。泣いていたかは皆さんのご想像にお任せします」といたずらっぽく笑った。

 即興とは思えない動きを連発した。アップテンポの音楽に合わせて激しく足を動かしたかと思えば、曲が止まると同時にピタリと止まるフリーズ。持ち味の音楽との調和性は「ストリートダンスの聖地」とされるOCAT(大阪市浪速区)地下1階のポンテ広場で育まれた。ダンスを始めた7歳から東京に拠点を移す18歳までほぼ毎日、学生や社会人、外国人観光客らが流す音楽に合わせて踊った。「同じ人が同じ端末でかける音楽には偏りがあるが、広場の曲はランダム」。ストリート育ちの感性が強さの秘訣(ひけつ)だ。

 重圧をはね返した。昨年は新型コロナの影響で渋谷区のライブハウスで無観客開催。24年パリ五輪での採用が決まってから初めて有観客で迎える日本選手権だった。NHKが生中継したこともあり、注目度は格段にアップ。街を歩けば自らが踊る写真や映像が嫌でも目に入った。過緊張状態に陥りかけたが、朝目覚めた時に「五輪で金メダルを懸けた決勝の朝はもっとプレッシャーがかかる。これぐらいの重圧は感じておいた方がいい」と達観。「最後はいいエネルギーに変えることができた」と振り返った。

 カルチャーがスポーツとなり、業界内にはダンスに点数をつけることに違和感を持つ人も多い。SHIGEKIXは「僕はブレイキンが大きくなることがうれしい。その中で、うそ偽りのないブレイキンの姿を世の中に伝えたい。ブレイキンの象徴のような存在になりたい」と力を込めた。24、25日には北九州市で開催されるワールドシリーズに出場予定。世界のダンサーが集まる大舞台で再び独創的なステップを踏む。

 【半井 重幸(なからい・しげゆき)】☆生まれとサイズ 2002年(平14)3月11日生まれ、大阪府大阪狭山市出身の20歳。身長1メートル66、体重58キロ、体脂肪率7%。

 ☆競技 7歳でブレイクダンスを始め、11歳から世界大会に出場した。18年のユース五輪で銅メダル。20年に世界最高峰の大会「Red Bull BC One World Final」を史上最年少18歳で制した。

 ☆ダンサー名 SHIGEKIXは名前の重幸(しげゆき)から派生し、UHA味覚糖の商品に由来。UHA味覚糖からの許可も得ており、商品アンバサダーも務める。お菓子のシゲキックスは家に常備。

 ☆所属 中学卒業後の17年にTEAM G―SHOCKに加入。19年にはレッドブルと契約し、Red Bull BC One All Starsに加入した。レッドブル、G―SHOCK、ナイキ、エクスペリアなどとスポンサー契約を結ぶ。

 ☆特技 描画。腕前はプロ級で個展のオファーも来ている。海外遠征時には美術館に足を運ぶことも多い。幼稚園から小学4年まで打ち込んだトランポリンも得意。

 【ブレイクダンス競技アラカルト】☆歴史 1970年代に米ニューヨークのブロンクス地区で発祥。ギャングの抗争を、暴力ではなく踊りで平和的に対決するようになったことが起源とされる。国際オリンピック委員会(IOC)は18年ユース五輪ブエノスアイレス大会で初めて実施。「ブレイキン」とも呼ばれる。

 ☆競技方法 個人戦、チーム戦がある。パリ五輪は1対1を採用。DJがかける音楽に合わせて、即興で1対1で交互にアクロバチックなダンスを披露し合い、技術や表現力、独創性を競う。1回に踊る時間は自由だが、30~60秒が一般的。ジャッジ(審査員)による採点で勝敗を決め「ボディ(技術)」「ソウル(表現)」「マインド(独創性)」が評価基準になる。全日本選手権は準々決勝、準決勝が2ラウンド先取制、決勝は3ラウンド制で実施。各ラウンドごとに5人のジャッジが優劣をつける。3人以上の支持を得た選手がそのラウンドを獲る。

 ☆ダンス構成 基本技は(1)立って踊りステップで魅せる「トップロック」(2)手を地面についた状態で足技を繰り出す「フットワーク」(3)頭、肩、背中、手など全身を使って回ったり跳ねたりする「パワームーブ」(4)ピタッと止まる「フリーズ」の4要素がある。

 ☆パリ五輪出場枠 男女各16人で、各国・地域から最大2人。今年9月の世界選手権(ベルギー)の優勝者が出場内定1号となり、5枠は大陸別の大会(アジアは杭州アジア大会)、残りはIOCが導入する予選シリーズなどで決める。日本は男女とも全日本選手権の上位8人を23年度の強化選手とし、五輪選考対象となる国際大会に優先的に派遣する方針。

 ☆有力選手 日本は昨年の世界選手権で男子のSHIGEKIXが準優勝、女子のAMIが優勝、AYUMIが3位と世界トップクラスのダンサーがそろう。男子は昨年世界選手権覇者WIZARD(カナダ)、女子は同準優勝の671(中国)らがライバル。

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