日本代表FB山中亮平 ラグビーW杯への覚悟「死んでもいいくらいの気持ちでいきたい」大畑大介氏と対談

[ 2023年2月20日 09:00 ]

懐かしいJAPANのジャージーなどを背に握手する大畑大介氏(左)と山中亮平(撮影・亀井 直樹)
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 ぶっ壊れても日本のために――。ラグビーのW杯フランス大会は9月8日の開幕まで20日でちょうど200日。カウントダウンが始まる中、日本代表FB山中亮平(34=神戸)が、テストマッチ通算69トライの世界記録を持つ元日本代表WTB大畑大介氏(47)に現在の心境と決意を明かした。ともに東海大仰星(現東海大大阪仰星)の出身で、新旧神戸の顔といえる2人。山中は集大成と位置づける舞台で、先輩にフル回転の活躍を誓った。(取材・構成 西海 康平)

 大畑 現在のコンディションは?

 山中 体の状態はいいですね。(リーグワンで)チームの負けが続いたりしたけど、個人的にはいい感じできています。

 大畑 リーグワンでは神戸の成績が伸びていない。どこがうまくいっていないのか?

 山中 ディフェンスのシステムが機能していなかったし、チームとしてプレッシャーをかけられず(相手の)好きなようにアタックされていた。ミーティングでも話して、最近は前にプレッシャーをかけられるようになってきた。シーズン中に修正はできているかなと思います。

 大畑 リーグ戦が進めば、W杯も見えてくる。開幕までの意識は?

 山中 自分がアピールする場はリーグワンしかありません。一試合一試合、どれだけチームや個人で結果を残せるか。チームが勝っていれば、おのずと良いプレーができている証拠だと思う。神戸をどう勝たせるかを大事にしてやっていきたいです。

 大畑 プレーに落ち着きが出てきたし、安定感も増している。昨年の夏から秋は多くのテストマッチに出場した。

 山中 今まで、日本代表で多く試合に出ることがなかった。追加で呼ばれたり、FBで試合に出るのも数えるくらいだった。やっと、しっかり日本代表になれたという感じです。

 大畑 日本代表でも存在感が増している。

 山中 FBのポジショニングや、戦術も変わった。今まではアタックの時にSOの周りにいたけど、ラインに参加することが増えたし、キックを使う機会も増えた。より自分に合ったスタイルになっています。

 大畑 昨秋はニュージーランド相手にあと一歩のところまで迫った(※1)。貴重な経験になったか?

 山中 (ヘッドコーチの)ジェイミー・ジョセフは“秋のツアーはベースキャンプだ”と言っていました。W杯への成長段階だから、チームがどれだけ成長できるかが大事だと。終わってから、個人としては11月のフランス戦の反省点を伝えられたのと、ツアーを通してすごく成長したとも言ってもらえました。

 大畑 大学生で日本代表に選ばれてから、十数年がたった。心境などの変化は?

 山中 これまでも日本代表には毎回、呼ばれるわけじゃなかった。今でも“呼ばれなかったらどうしよう”と不安だし、そういう意味では、まだまだ若手な感じ。練習中も含めて、最初に日本代表に入った頃と同じ気持ちです。

 大畑 とはいえ、与えられる役割は変わってきた。

 山中 今までは、自分の役割とプレーをやりきればいいと思っていました。それは今もあるけど、若い選手より長くジェイミー・ジャパンに入っている。コミュニケーションを取ったり、練習外で盛り上げたり、いろいろ意識はしています。

 大畑 W杯まで200日。どう感じる?

 山中 短いですね。もう、すぐに来ると思う。本当に一日一日を無駄にできない。

 大畑 このW杯は集大成と捉えている?

 山中 集大成ですね。35歳になって迎えるし、代表としてもラストだと感じています。このW杯が自分のラグビー人生の集大成かなと思います。

 大畑 1次リーグはイングランドやアルゼンチン、サモア、チリと対戦する。最も重要なのは?

 山中 やはり、1試合目のチリ戦だと思います。前回(※2)のロシア戦はみんな緊張していて前半の入りは悪かったけど、勝って勢いをつけることができた。初戦で良いパフォーマンスを発揮して、勢いに乗れるかどうかが大事になると思います。

 大畑 山中選手と初めて出会ったのは16歳か17歳の頃。あの頃は鼻息が荒くて“俺が俺が”というタイプだった。年齢を重ねてオーガナイズする立場。集大成と位置づけるW杯への思いを聞かせてください。

 山中 W杯をラストと考えたら、もう日本代表として数えるぐらいしか試合がない。悔いが残らないよう一日一日を過ごしたいし、W杯は死んでもいいぐらいの気持ちでいきたい。ぶっ壊れようが、そこで死のうが、体をぶつけて日本のために全力でプレーしたい。

 大畑 僕が立てなかったフランスの地でもあるので(※3)。期待しています。

 山中 がっつり、いきます。

 (※1)日本代表は昨夏に4試合、昨秋6試合を戦った(オーストラリアA戦を含む)。山中は10試合中8試合に先発し、10月に行われたニュージーランド戦は31―38と惜敗した。

 (※2)日本代表は19年のW杯日本大会初戦でロシアと対戦。前半4分に先制トライを奪われたが、WTB松島幸太朗が3トライを奪う活躍などで逆転。30―10で勝利した。山中は後半30分からFBで途中出場した。

 (※3)07年W杯はフランスを中心にウェールズ、スコットランドも含めて開催された。大畑氏は自身3度目となるW杯出場へ向け日本代表メンバーに名を連ねていたが、大会直前の調整試合で左アキレス腱を断裂。本大会のピッチに立てなかった。

 ◇山中 亮平(やまなか・りょうへい)1988年(昭63)6月22日生まれ、大阪府出身の34歳。真住中2年から競技を始め、東海大仰星、早大を経て13年に神戸製鋼(現神戸)入り。代表歴はU20日本代表、高校日本代表。10年5月8日のアラビアンガルフ戦で初キャップ。19年W杯日本代表。日本代表キャップ27。1メートル88、98キロ。FB。

 ◇大畑 大介(おおはた・だいすけ)1975年(昭50)11月11日生まれ、大阪市出身の47歳。小3から競技を始め、東海大仰星、京産大を経て98年に神戸製鋼(現神戸)入り。02年12月にフランス1部リーグへ移籍。03年に神鋼へ復帰し、トップリーグ初代王者へ導く。W杯は99年、03年大会に出場。テストマッチ通算69トライは世界記録。日本代表キャップ58。16年ワールドラグビー殿堂入り。現在は神戸アンバサダー。

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