「教育」の存在しない大学スポーツはありえへん 指導者は勝つことだけ教えてたらあかんで

[ 2022年11月30日 21:30 ]

鳥内秀晃氏
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 【名将・鳥内秀晃の人間話 頼むでホンマ】先日、楠淳生さんのラジオ番組(LET'S GOアスリート、ABCラジオ)に、昨年まで帝京大ラグビー部の監督やった岩出雅之さん(現同大教授)と一緒に出て。いろんな話が聞けて、興味深かったわ。

 強く思ったんは、岩出さんもオレと同じで、クラブ活動を教育として捉えている点やな。生徒には自分で考えさせるし、上級生が下級生をちゃんと教えてる。これが本来の課外活動の姿とちゃうのかな。

 岩出さんかて、監督になりたての頃は、前時代的なスタイルで指導してたらしいわ。けど、結果も出んし、このままではダメってことになって、やり方を根本から見直さはったみたいやな。9連覇(09年度~17年度)の最初の頃は、まだ学生と意見の相違があったらしいけど、丁寧に説明して、教育という原点を忘れんとシステムを構築していったから、勝てるようになったんやな。上級生がラグビーだけでなく、授業を受ける態度や私生活でも見本になった集団は強いはずや。自分たちで考える習慣がついているから、試合の時でもしっかり危機管理ができて、臨機応変なプレーができるんよ。

 我々に共通するんは、大学のクラブは勝つことだけが目的やないってことやねん。日々の練習や試合、指導者やチームメイトとの人間関係を通じて、いかに社会で通用する人材を育てるか。勝利至上主義のセミプロ化した一部のスポーツクラブは、教育という観点が完全に欠落してるわ。学生は競技している時間より、その後の人生の方がずっと長いねんで。競技をやめた後、どうやって生きていくのかを指導者はちゃんと教えたらなあかんのちゃうかな。

 学生のことを最優先に考えているとは思えへんクラブもある中、関東大学アメフトリーグの「TOP8」最終戦(11月23日)で、法大が脳しんとうの疑いがあったRB星野凌太朗君を第2Qから一切使わなかった判断は立派やったな。アメリカのカレッジでは、少しでも脳しんとうの疑いがあれば、無理矢理出さへんのが普通や。日本では、まだ徹底されてへんのが実情やろな。「学生の安全を第一に」って、言うだけではあかん。早大には負けたけど、星野君の身体や将来のことを真っ先に考えて、休ませたのは、今後の日本スポーツ界にとっても手本となったと思うで。

 うちのチームかて、もちろんそういう選手は絶対に試合で出さへん。交代メンバーっていうのは、そういう時のために、いてるもんやねん。試合中のケガに限らず、何が起きるか分からへんやろ。交代選手はいつ呼ばれてもいいように、日頃からレギュラーと同じ気持ち、コンディションで備えとかなあかんねん。

 一つのクラブが「安全管理」と「備え」を徹底してるんやから、政府も同じようにできるはずやで。けど、「困っている人のために」って言うてる割には、コロナ禍で仕事を失ったりして、大変な思いをしている人のとこにお金がいかない一方で、赤字の病院が黒字になったなんてニュースを聞くと、どないなってんねん、と思うわ。災害の多いこの国で、国は二手、三手先を読んで、ちゃんと準備をしてるんやろか。スポーツも、人生も、やり直しがきかないのは一緒。何か起きてからでは遅いねんから、いろんな場所に目配せして、やってほしいな。頼むで、ホンマ。

(関西学院大アメリカンフットボール部前監督)

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