ノルディックスキー複合 26年五輪除外危機…IOC、国際連盟は否定も男女平等課題

[ 2022年6月17日 05:20 ]

北京五輪ノルディックスキー複合男子団体で銅メダルを獲得し、日の丸を掲げる(左から)渡部善斗、永井秀昭、渡部暁斗、山本涼太
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 日本が多くの五輪メダルを獲得してきたノルディックスキー複合が、次回の2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ大会で除外される可能性があると15日、AP通信が報じた。2月の北京大会で唯一女子が実施されず、国際オリンピック委員会(IOC)が重視する男女平等で課題を抱えている。

 冬季五輪に5度出場し、米国の競技団体幹部を務めるデモング氏は「26年大会から複合の男子を取り下げることを関係者から聞いた」と明かした。同大会の追加競技に山岳スキーを採用したIOCが、参加選手の増加を望んでいないことが背景にあると指摘した。

 国際スキー・スノーボード連盟は20~21年シーズンにW杯で、21年には世界選手権で女子を初採用。日本勢は21~22年シーズンのW杯個人第7戦で中村安寿(東海大)が初優勝した。五輪も格差を解消するため、IOCに26年大会での実施を提案したばかり。五輪メダリストの渡部暁斗(北野建設)らが賛同する署名活動も行われている。IOCは今月24日の理事会で26年五輪の実施種目を議論する予定で、存続危機の報道は「臆測に過ぎない」とコメントした。

 複合女子の採用を最優先に要望する国際連盟も「26年五輪からの除外は議題に上がっていない」と否定。全日本スキー連盟幹部は「噂は全く聞いていない」と驚いた様子。「女子が正式種目になるかもしれないという時期に、男女ともなくすのはないはず。(強豪の)ノルウェーもドイツも黙っていない」と話した。

 複合は第1回冬季五輪の1924年シャモニー大会から実施され、日本は荻原健司、河野孝典らを擁した団体で92年アルベールビル、94年リレハンメル大会を2連覇した。近年では渡部暁が3大会連続で個人種目の表彰台に立ち、北京大会は団体も銅。荻原健司長野市長は「報道されている内容が事実かどうか定かでない中であるが、報道内容が事実でないことを祈りたい」とコメント。“お家芸”と呼ばれた得意種目の除外となれば、強化と普及で痛手になる。

 ▼永井秀昭(北京五輪ノルディック複合団体銅メダル)記事を見た瞬間は驚きの方が大きかった。もしそうなったら大変残念なこと。(五輪で)28年ぶりの団体のメダルは日本チームにとって良い流れとなった。次の世代にいい経験をしてもらいたいという思いもあり、何とか除外しない方向になっていただきたい。

 《夏季五輪レスリング グレコなどは男子のみ≫男子または女子のみ実施の五輪競技・種目は多くある。夏季の新体操とアーティスティックスイミングは、女子のみ実施される競技。種目別では、夏季のレスリング・グレコローマンや冬季のジャンプ・ラージヒルは男子のみ実施されている。実施種目に違いがあるものとしては、夏季の体操で男子のみの鉄棒・つり輪・あん馬・平行棒と女子の平均台・段違い平行棒、陸上で男子の十種競技と女子の七種競技などがある。

 【過去に消滅した五輪種目】

 ☆野球 84年ロサンゼルス大会などでの公開競技を経て、92年バルセロナ大会から正式種目。ただ、世界での普及状況や米国が大リーグ所属の選手を出さないなど非協力的な姿勢で、08年北京大会を最後に消滅。昨夏の東京大会では追加種目として採用された。

 ☆ソフトボール 96年アトランタ大会から女子のみ正式競技として採用。野球同様に普及状況などを理由に、08年北京大会を最後に消滅。東京五輪では野球・ソフトボールとして採用された。

 ☆芸術 1912年ストックホルム大会から48年ロンドン大会まで7大会連続で実施された。絵画、彫刻、音楽など5種目行われたが、日程面や採点方法の難しさから除外。

 ☆スノーボード・パラレル回転 14年ソチ大会で初採用も、18年平昌大会で消滅。この大会から新たにビッグエアが採用されたあおりを受け、パラレル大回転に集約された。

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