パラ競泳の山田美幸 天国の父にささげた銀メダル 史上最年少14歳&日本メダル1号の快挙 

[ 2021年8月26日 05:30 ]

東京パラリンピック第2日 競泳女子100メートル背泳ぎ(運動機能障がいS2)決勝 ( 2021年8月25日    東京アクアティクスセンター )

銀メダルを受け取り笑顔の山田(撮影・光山 貴大)
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 競泳は女子100メートル背泳ぎ(運動機能障がいS2)決勝で今大会日本選手団最年少代表の14歳、山田美幸(WS新潟)が2分26秒18で日本勢1号となる銀メダルを獲得。84年ニューヨーク大会の陸上男子で銅メダルを獲得した嶋津良範の16歳を抜き、日本史上最年少メダリストとなった。男子50メートル平泳ぎ(運動機能障がいSB3)決勝は5大会連続出場の鈴木孝幸(34=ゴールドウイン)が49秒32で銅メダル。競泳日本勢が好スタートを切った。

 チームジャパンに勢いをもたらす銀メダルでフィニッシュした新星は、プールを出ると一礼。そしてトレードマークの天真らんまんな笑顔を咲かせた。「とても興奮していて、とてもうれしいです。とても楽しかった」

 生まれつき両腕がなく、両脚も左右で長さが異なる。力強いキックに加えて頭をわずかに傾けることで真っすぐ泳げるように工夫。肩を使った上半身の激しい動きで推進力を生み、決勝は序盤からリードした。2番手で折り返した後半も粘りを見せ、スタート前は最年少メダルの自覚がなかった14歳は「おまけ」の記録に「ビックリしている」と目を丸くした。

 水泳との出合いは保育園時代。小児ぜんそく克服と「お風呂でおぼれないように」という理由もあったと笑う。成長するにつれて障がいを自覚し始めたが、バリアフリーの水中では「水泳であんまり他の人と違うと思ったりはしませんでした」。代表入り後、初出場した昨年2月の国際大会で従来よりも障がいの程度が重いクラスに変更。大幅なタイム短縮もあって、この1年で一気に世界トップクラスまで成長した。

 喜びを伝えたい人がいる。2年前にこの世を去った父・一偉(かずい)さん。「あと3日で入院して手術というところだったんですけど、がんで倒れて」。幼少期は水泳の話をすると「俺も昔はカッパだったんだよ」と柔和な笑みで応じてくれた。「天国があるなら見ていてくれているんじゃないかな」。そう語っていた山田は、父にささげるメダルに「パパに私もカッパになりましたと伝えたい」と声を震わせた。

 16年リオ大会をテレビで見て憧れた舞台で、堂々のデビューを果たした。9月2日には50メートル背泳ぎが控える。「金メダルを獲れるように頑張りたい」。1メートル40の新エースは、力強く宣言した。

 ☆生まれ 2006年(平18)9月15日生まれ、新潟県阿賀野市出身の14歳。1メートル40、33キロ。阿賀野市立京ケ瀬中3年生。

 ☆飛躍 20年2月にメルボルンで国際大会に出場し、背泳ぎのクラス分けがS3から障がいの程度が重いS2に変更。急速なタイム短縮もあってトップ選手の仲間入りし、同年11月の国内記録会50メートル背泳ぎで19年世界選手権2位相当の好記録。

 ☆美幸 小学校の課題で由来を調べ「美しい幸せを手に入れてほしい。美しくなってほしい」という願いに加えて「(漢字が)線対称だから」と確認。

 ☆英語 「人と話すのが好き。日本人だけでなく、海外のいろんな人とも話したい」と英語スピーチに挑戦。

 ☆リフレッシュ マインクラフトなどゲーム実況の動画を観賞。

 ☆受験 得意科目は英語で、暗記系や国語が苦手。「ゲームなどの誘惑にあらがいながら頑張っています」
 ☆座右の銘 「無欲は怠惰の基である」

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2021年8月26日のニュース