【高校ラグビー開幕直前連載】四日市工が初出場できたわけ 狭き門突破したチームトーク

[ 2020年12月24日 05:30 ]

花園今昔物語(3)初出場校

岡崎主将(中央)を中心に円陣を組む四日市工。選手だけで話し合う光景が練習中に何度も見られた

 第100回全国高校ラグビー大会が27日に花園ラグビー場(大阪府東大阪市)で開幕する。連載第3回は「初出場校」。四日市工は三重大会決勝で敗れた後、記念大会13校増枠の恩恵を受け、東海ブロックを勝ち抜いて初の全国切符をつかんだ。全国出場校の顔ぶれが変化しにくい「狭き門」を突破した要因とは?

 四日市工は練習中に大なり小なりの円がよくできる。そこに監督、コーチはいない。選手だけの作戦会議だ。

 通称「チームトーク」は、今年、コーチから昇格した渡辺翔監督(38)の肝いり企画。「気付いたことを意見交換し、それをみんなの前で話させる。守備で思い切って前に出るためには、周囲とコミュニケーションを取る必要がある」。持ち味の組織ディフェンスを実現するために、普段から話す意識を植え付けている。

 今秋は5戦中3試合で無失点。三重大会準優勝で進んだ東海地区でも堅守が光った。静岡聖光学院戦の後半は防戦一方になりながら、ロック岡崎翼主将(3年)は「練習から話し合うことで試合中の修正ができる。聖光戦はそれができた」と誇らしげだ。コロナ禍の今春、3年生の発案で学校のウエートトレーニング器具を何軒かの部員宅に運び込み、“ガレージ筋トレ”に精を出した。声と並ぶ自主性の成果が大一番で表れ、20―19で逃げ切った。

 手作りで強くなったようなチームだ。県の中堅で、黙っていては部員は集まらない。渡辺監督は例年、1年生の名簿を手に校門で100人近く声をかける。部員も、連日勧誘に繰り出す。最後はウエイトリフティング部と争奪戦になるそうだ。部員57人中、経験者は「2割ほど」。鍛え、楽しませ、やる気を引き出して力を付けた。

 全都道府県から代表が毎年出る形に定着したのは90年度からと歴史は浅い。その年、初出場は8校で、近年は減少。少子化に伴い、もともと強い学校とそうでない学校で部員数は二極化。特に公立は細っていった。指導者不足もネックで、公立で力を付けた学校は、情熱ある教師が異動先を強くしたケースが目立つ。

 100回大会は13校増枠もあって、4校が初めて全国の舞台に上がる。そのうち公立は四日市工だけだ。渡辺監督は、11度目出場の県立の朝明から移り、新天地に花を開かせた。初戦は27日の岡谷工(長野)。新顔と出場31回の伝統校との激突になる。 (倉世古 洋平)

※花園出場の全63校の選手名鑑は、スポーツニッポン大阪版12月26日紙面で掲載予定(開幕前日のメンバー変更は反映されていません)。遠隔地の方もヤフーショッピングで購入できます。

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