東京五輪あと400日 立て直せる?会場使用問題 組織委「8割確保」も…課題山積

[ 2020年6月18日 05:30 ]

東京五輪開催を待つ国立競技場
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 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により1年延期が決まった東京五輪(21年7月23日開幕)まで、あと400日となった。大会組織委員会はメディア拠点となる東京ビッグサイトと選手村を含む45の競技会場、施設について、「8割程度」確保したと明かしたが、その背景にはまだ多くの課題が山積している。来夏の開催自体を危ぶむ声も上がる中、各会場が抱える問題点を探った。

 組織委が今月中の解決を目指す会場確保問題。森喜朗会長は12日に来夏の利用について「8割程度の了解をいただいている」と強調した。だが、その実情は前途多難だ。

 年間約300件の展示会を行う東京ビッグサイトは五輪延期を受け、東展示棟の貸し出し休止期間延長と西・南展示棟の休止期間の来夏への変更を発表したが、連日対応に追われている。五輪に関わる会場には今年10月から来秋まで約100件の予約がすでに入っており、広報担当は「日程変更や展示会の規模などの調整をお願いしている段階。個々の要望にできるだけ応じているが、主催者さまによっては難しい部分がある」とこぼす。

 特に国際放送センター(IBC)が入る東展示棟は複雑な工事のため19年4月から閉鎖されており、延長分を含めると休止期間は約2年半にも及ぶ。日本展示会協会は1年間の延期に伴う展示会の中止、縮小による損失が1・5兆円、影響を受ける企業は約5万社に上るとしており「日本の展示会業界は再生不可能な痛手を負う」と表明。出展企業や業界団体が都に代替施設を要望する嘆願書を提出するなど影響は大きく、五輪ばかりが優先される情勢ではない。

 重量挙げの会場となる東京国際フォーラムも2年前から使用受け付けを始めており、来夏は予約が入っている状況。レスリングやフェンシングなどの会場となる千葉・幕張メッセも大型イベントなどの仮予約を進めていた。Jリーグやプロ野球が行われる競技会場は日程面などで調整が必要となり、いずれもコロナで確実な開催が見通せないだけに交渉は難航しているとみられる。

 確保が見込める会場の準備も決して順調ではない。仮設工事が進んでいる会場について組織委は「安全管理上で長期間の残置が困難なものは、いったん解体するという考えを基本に個別対応する」としており、維持管理のみならず解体、再工事の費用が追加で必要となる。サーフィン会場の千葉県一宮町の釣ケ崎海岸ビーチは選手、関係者エリアの仮設施設が建設途中の状態で、町オリンピック推進課は「さえぎるものなくダイレクトに潮風が当たっている。耐久性によるが(劣化は)間違いなくするはず」と塩害を懸念する。

 セーリング会場となる神奈川県藤沢市の江の島ヨットハーバーは独自の問題を抱える。ハーバーを保有する県は大会に向けて約11億円をかけ、民間の約700艇のヨット、クルーザーのうち9割の船を県内外17カ所に移動済みだった。延期により再移動問題が浮上し、県は6月補正予算案に移動費として6億7500万円を計上。県セーリング課は「係留先の期間延長を含め、江の島に戻りたい方が戻れる選択肢を用意する形で調整しています」と所有者と個別対応を進める予定だが、再移動を望む声が多ければ来年には当然“再々移動”が問題となる。

 会場によっては細かなメンテナンスが必要なケースもある。ビーチバレーは競技用の砂をベトナムから搬入済みで、かび防止のために毎月掘り返し、異物を取り除く作業が想定されている。ほぼ完成している有明アーバンスポーツパークのスケートボード仮設会場は「コンクリートの劣化などで大会前に再度仕上げが必要になる可能性がある」(競技関係者)という。コロナ対策として、既存施設や完成済みの新設会場の追加整備が必要となる可能性も高い。

 紆余(うよ)曲折を経て簡素化での開催へかじを切った東京五輪。大会成功に向けた道筋はいまだ見えていない。

 《すでに別で予約あり 利用者との交渉難航》会場確保は延期計画策定の上で最優先課題だ。組織委員会は10日に「コスト削減」「簡素化」など計画の原則を示したが、具体策はなし。「8割程度」の発表は延期決定から2カ月半で初めて具体例を挙げ、進展状況をアピールしたといえる。
 組織委の武藤敏郎事務総長は「8割程度」の会場を「東京都所有の競技会場、国立競技場、さいたまスーパーアリーナ、馬事公苑など」と明らかにした。一方、東京ビッグサイトや幕張メッセなどの展示会場は「利用者がいる」と交渉難航を示唆した。会場側は貸し出しに前向きだが、新型コロナウイルスの影響による展示業界の苦境を考慮すると「五輪だから当然(借りられる)という状況ではない」(組織委幹部)。業界団体などがビッグサイトへ出した嘆願書が交渉に与える影響も「大きい」と認めた。

 《「簡素化」「コスト削減」原則打ち出すもコロナ対策費は今秋から検討予定》大会延期に伴う課題は会場確保も含めて山積している。中心となるのが「追加費用」と「コロナ対策」。組織委が打ち出した原則「コスト削減」「簡素化」はその2つに対応するものだが、実現は容易ではない。
 簡素化については式典やイベントの縮小、サービス水準の最適化など200項目以上が見直しの対象となっている。だが、開幕4カ月前の延期決定とあって準備は相当進んでおり、大幅に経費節減できる項目は見つけにくい。聖火リレーの日程短縮にスポンサーが難色を示したといわれるなど、見直しが順調に進むかも不透明だ。中止の可能性やコロナ不況により大会スポンサーも契約継続に慎重な姿勢を崩していない。
 組織委は具体的なコロナ対策を今秋から始める予定だが、対策には検査費や人件費などがかかる。コスト削減どころか、さらに経費が必要となりそうだ。

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