桃田 課題は攻撃力UP、奥原&山口は調整力が鍵 “金”期待大のバド 小椋久美子さんが分析

[ 2020年6月14日 05:30 ]

五輪延期の光と影

バドミントンの桃田
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 メダルラッシュが期待されるバドミントンは、長期戦略が鍵となる。年内はトップランカーが集う機会が減る可能性が高い。08年北京五輪女子ダブルス代表の小椋久美子さん(36)は勝敗よりも、個々の課題を克服していくことが重要だと説く。既に五輪出場を確実とした男子シングルス世界ランク1位の桃田賢斗(25=NTT東日本)らは、その期間を有効活用できる。一方で、各国の有力選手の復調や成長速度が気掛かりとなる。

 バドミントンは1年にわたる選考レースが19年4月から始まっていた。全選手が気を張り詰めてレースや五輪本番に向かっていただけに、その喪失感は計り知れない。従来は選考レースと五輪の間隔が短く、2つは延長線上にあった。今回は逆に考えれば、出場を確実にした選手はリセットして準備がしやすい。マイナスに捉える必要はない。

 既に桃田や女子シングルスの奥原、山口、女子ダブルスの福島、広田組、混合の渡辺、東野組の出場が確実。21年再開の選考レースに照準を合わせる必要はない。また、年内のワールドツアーはコロナ禍の移動リスクや過密日程の影響で、シングルス15位、ダブルス10位以内のトップランカーに出場義務がある上位大会に欠場しても罰金が科されない方向で議論が進む。世界中の有力選手が出場大会を慎重に選ぶことが予想され、年内は正確な実力が測れない。この空白の時間をどう生かすか。代表スタッフを含め出場試合ごとにテーマを持ち、試行錯誤しながら課題や手応えを得る期間にしたい。

 桃田は、スピード強化など攻撃的な要素を伸ばせる。決定打のスマッシュに頼らないゲームメークをするが、攻撃がプラスされることで引き出しが増え、心理的なプレッシャーも与えられる。試合数の多い五輪で試合時間を減らし、体力温存にもつながる。もう交通事故の負傷の影響はなく、かなり練習で追い込んでいると聞く。1年延期をプラスに変えられるのではないか。

 若さのある混合ダブルスの渡辺、東野組も大きく成長できる。スピードとテクニックで勝負してきた2人はパワーショットを強くすることで、剛柔合わせたプレーが可能。18年から専門のガン・コーチの指導を受けており、もう1年の経験値で引き出しが増えそうだ。

 各種目の勢力図が大きく変わることはないが、故障明けの選手が状態を戻してくる。男子シングルスなら桃田のライバルの一人、石宇奇(中国)の存在。若手のアントンセン(デンマーク)、ギンティング(インドネシア)も経験を積み、さらにし烈な争いが予想される。

 女子は上位選手の実力が拮抗(きっこう)する中で、右膝前十字じん帯を負傷したリオ五輪金メダルのマリン(スペイン)の復調、18歳の安洗瑩(アンセヨン)(韓国)の成長が怖い。奥原、山口は五輪に向けてよい準備ができていたので再びうまく調整できるかが鍵。長身の海外選手と戦うにはよりスピード感やフィジカルの強化が求められるが、練習にはかなりの追い込みが必要なためケガのリスクも高く注意が必要だ。

 男女ダブルスも上位の顔触れは変わらない分、状態を落としたらすぐに力関係が逆転する。女子の福島、広田組は3月の全英オープン優勝で波に乗り、五輪開催が今年なら面白かった。この状態を1年続けられるか。女子はここ数年で韓国勢が急速に力をつけ、怖い存在となっている。パワーヒッターの特長をさらに強化されると、一発勝負の五輪では行方は分からない。

 近年、日本代表は全種目が相乗効果で成績を上げてきた。好循環の流れで五輪を迎えてほしかった。五輪初出場の選手が多くなるので、緊張感のある中でも発揮できるスピードと持久力の強化をじっくり行ってほしい。メンタル面では競技に関係なく出場経験者の話を聞くなどのアプローチがあってもいい。

 《五輪選考対象レースは21年1~5月 男単、女複の2枠目争い焦点》3月の全英オープン後に中断されたワールドツアーは、9月から再開される。日本代表の派遣再開時期は未定。7月上旬に代表合宿の実施が予定されている。

 全英オープンに出場した代表選手は2週間の自宅待機を経て、4月から各所属チームの判断で練習を再開。占有できる体育館の有無や新型コロナウイルス感染状況の地域差もあり、選手たちの練習環境はそれぞれ異なる。桃田は「試合はないが、モチベーションはシンプルにバドミントンを極めること。どう強くなれるか」と語る。

 年内のツアーは五輪レース対象外だが、本番のシード順の基になる世界ランクに影響する。五輪選考レースは21年1月から5月まで再開され、今年中止となった対象大会が3月以降に集中的に行われる。日本勢は男単と女複の2枠目の争いと男子複の2枠確保が焦点となる。

 ◆小椋 久美子(おぐら・くみこ)1983年(昭58)7月5日生まれ、三重県出身の36歳。四天王寺高から02年三洋電機に入社。同年の全日本総合選手権でシングルス優勝。その後は潮田玲子との「オグシオ」ペアとして女子ダブルスで04年から全日本総合選手権5連覇。07年世界選手権銅メダル、08年北京五輪5位。10年1月に現役引退し、現在はスポーツインストラクターとして活躍。

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