追悼連載~「コービー激動の41年」その100 シャキール・オニールが語った真実
ヘリコプターの墜落事故で死亡したコービー・ブライアントと次女ジアナさんらの合同葬儀は2月24日、レイカーズの本拠地、ロサンゼルスのステイプルズセンターで営まれ、マイケル・ジョーダンに続いて、ファイナル3連覇に貢献したシャキール・オニールも壇上に立った。
オニールは事故の2日後となった1月28日、コメンテーターを務めているTNT局の番組に出演。涙ながらに悲報を受け取った状況と心境について語っていた。
「息子のシャリーフ(現ルイジアナ州立大)と甥っ子のコロンバス(高校生)が1階にいて自分は2階から降りてきた。するともう1人の甥っ子が泣きながら自分の携帯の画面を見せたんだ。最初は加工された写真だと思った。何かの間違いだと思った。心を3回、刺されたような痛みだった」
見せられた写真はおそらく事故現場の写真ではなかったかと思う。オニールは昨年の10月24日、義理の妹、アイーシャ・ハリソンジェックスさんをがんで亡くしており、以後ずっと眠れない日々を過ごしていたのという。それからわずか3カ月、今度はともにレイカーズでプレーした“戦友”を失ったために、いつもの陽気な笑顔はテレビ画面からは消え失せていた。
葬儀で壇上に立った時、オニールはまず「フーッ」と大きなため息をつき、それはマイクの位置を自分で調整したあとさらにもう一度、もれてきた。「自分がスピーチをするのは彼(ブライアント)の殿堂入り式典か、彼の慈善団体が主宰するイベントだと思っていた。だからこんなことは想像もできなかった」。スピーチを始めてしばらくその表情は険しかった。ようやくため息から笑顔に変わったのは、マイケル・ジョーダンが「クライング・ジョーダン」のネタを披露したのと同じように、渾身の?ジョークを披露したときだった。
レイカーズ時代のチームメート、リック・フォックスとロバート・オーリーが「ブライアントがなかなかパスをしない」という不満を口にしたことを受けて、オニールが仲裁に入ったときの話。オニールは「チームに“I(私)”はいらない」とブライアントにチームワークの必要性を説こうとしたのだが、知的な会話を好む?後輩はすかさずこう切り返した。
「その通り。だけどそのチームに“ME”はいるんだぜ」。このコメントの文末には書いてはいけない言葉があるのでそれは省略するが、つまりオニールは「チームにおける利己的な存在」という意味で「I」を使ったのだが、ブライアントはその「I」をオニール自身に差し替えて?「オニールはいないが、自分がいる」という意味で「ME」という言葉を使ったのだった。
オニールは「コービーはバスケでは本当に才能あふれる知的な生徒のようだった」とも語ったが、あまりにも機転の利いたカウンターパンチを浴びてすごすごとフォックスとオーリーのもとへ戻り「やつはパスなんかしない。だからリバウンドを拾うしかないぞ」と“プランB”に変更したそうだ。
葬儀会場となったステイプルズ・センターの場内も笑い声に包まれた。しかし2メートル16の巨漢センターは核心部分についてもきちんと述べていた。それが2人の確執にまつわる部分だった。
「私と彼との関係は長年にわたって複雑だった。でもジョン・レノンとポール・マッカートニー(元ビートルズ)はお互いの想像力をぶつけ合う形で素晴らしい曲を作っている。僕らは未熟な子どものように言い争い、けんかをしてきた。でもカメラのないところでコービーと私はウインクをかわして“さあ、やるぞ”と言っていた。軽率だと言われた発言を真に受け取ったことは一度もないんだ。ともに深い尊敬の念を常に抱いていた」
ブライアントとフィル・ジャクソン監督との間には亀裂が入っていたことは両者ともに認めているが、オニールは少なくとも自分の見解として、メディアに騒がれていた“犬猿の仲”は勝つがための見せかけのポーズだったと主張。そして「コービー、君は天国のMVPだ。また会える日まで安らかにね」という言葉で追悼スピーチを締めくくった。そこには自分の人生に対する深い思いのようなものも見え隠れしていた。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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