ロスタイムの奇跡 神鋼劇的V3 ウィリアムス50メートル独走トライ

[ 2020年4月30日 12:16 ]

ロスタイムに入って劇的な同点トライを決めた神戸製鋼・ウィリアムス(左)
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 ロスタイムのミラクル劇が7連覇の礎を築いた。スポーツ史を彩ってきた珠玉の戦いをプレーバックする「スポニチ厳選名勝負数え唄」の今回は、神戸製鋼ラグビー部。4点を追う後半ロスタイム、WTBウィリアムスの50メートル独走トライで追いつき、FB細川のゴールで劇的V3を飾った奇跡の逆転ドラマを取り上げる。

 悲鳴と絶叫が交錯する中、ハーフウエーでボールを受け取ったウィリアムスは全速力で右サイドを駆け上がった。バックスタンドを埋めた観客はまるでウエーブを起こすかのように次々と立ち上がっていく。4点を追った後半ロスタイム。電光掲示板の時計はすでに42分を回っていた。

 起点は、自陣10メートル付近の左中間ラックだった。SH萩本は素早く右へ展開。SO薮木が放った一人飛ばしのパスはやや乱れた。ただ、ワンバウンドしたボールは幸運にもCTB平尾主将の胸にすっぽりと収まった。その平尾は一人飛ばしてフワリとした山なりのパスをウィリアムスへ送った。奇跡の扉が開いた瞬間だった。
 「最後は足がタイトになっていたよ。ゴール、ゴールとそのことだけを考えて走った。何だかスローモーションを見ているよう。とても疲れました」

 漆黒のジャージーに身を包んだ助っ人は屈託なく笑った。両軍ともファーストジャージーが赤のため、神鋼は初めて黒のセカンドを着用した。逃げるウィリアムス、追うナモア――。最後はナモアの右手が襟にかかったが、50メートルを走りきった。ただ、同点のままではトライ数で上回る三洋電機が日本選手権へ進む。インゴールに入った瞬間、左へ大きく旋回してゴール中央へ回り込んだ。FB細川のゴール成功でミラクル劇は完結した。

 「(トライを)取れるんやったら、あれしかない。いい時にいいヤツに球が回った。負ける時はこんなものかなあと時計を見ながらプレーしました」

 平尾の言葉が激戦を物語った。10年ぶりの決勝進出だった三洋電機。神鋼には2年前の準々決勝で2点差惜敗。前年の1回戦は12―19で敗れていたが、王者を最も苦しめていたのが三洋電機だった。No.8ラトゥを軸に飯島主将と宮本を加えたFW第3列は破壊力ある突破で神鋼を苦しめた。モール、ラックの集散でも上回り、試合を支配したのはむしろ三洋電機の方だった。

 FW戦は負けた自覚があったのだろう。試合後、ロック大八木は険しい表情を浮かべていた。ロック林の耳からは血が流れていた。4PG1Gを決めた細川は準決勝のサントリー戦で右足首を捻挫し、決勝前日は走れないほどだった。満身創痍でつかんだV3。日本ラグビー史に刻まれるロスタイムの奇跡は7連覇の礎になった。=敬称略=

 ○…新幹線でカンパ~イ! 社会人日本一に輝いたチームはこの日だけ飲酒が許可された。ただし、飲めるのは当日の午前零時まで。平尾主将ら部員は東京から新神戸へ向かう新幹線の車中で缶ビールを手に乾杯を繰り返した。禁酒を掲げ、激闘の末に勝ち取った頂点。苦楽をともにしてきた仲間と味わうビールの苦みは格別だった。

 ○…5度目の決勝進出を果たした三洋電機だったが、初優勝は遠かった。4点リードの後半ロスタイムに暗転。神鋼WTBウィリアムスの激走に屈した。スタンドで戦況を見つめた宮地克実監督は呆然とした表情で立ち上がったまま動けなかった。四條畷、同大出身の指揮官は大阪人らしいコメントに悔しさをにじませた。「あすの見出しは“奇跡の使者ウィリアムス”でっしゃろな。集中力が途切れよった。どこかで勝ったという気持ちがあったんやろな」と声を絞り出した。

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