ラグビーW杯 迅速だった“ルール変更” 食品持ち込みOKに続き、国歌斉唱も何とか…

[ 2019年9月24日 10:00 ]

<日本・ロシア>国歌斉唱する日本代表フィフティーン(撮影・吉田 剛)
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 まずは今回の英断を称えたい。

 ラグビーW杯の組織委員会は23日、試合会場への持ち込み規制を一部緩和し、個人で消費できる範囲の量の食品に限って、持ち込みを認めることを決めた。同日のウェールズ―ジョージア戦から早速適用。今後は全ての試合で同様の対応となる。

 開幕から3日間は日本戦など好カードが続いたこともあるが、多くのファンがスタジアムを訪れ、そのために売店で販売される食品が供給不足に陥っていた。需要予測の甘さや、チケット購入者への周知不足など、当然ながら課題はある。一方でスポンサーなど権利関係の縛りが大きいW杯のような大会で、期間中にルールが変更されるのは極めて珍しい。関係各所との調整など迅速に処理し、開幕4日目にして変更を実現したことは、好意的に捉えたいと思う。

 そして、ここからが本題。今大会、ここまで3試合を会場で取材して、最も残念に思っているのが、国歌演奏が吹奏合奏ではなく、独唱者や合唱隊がいないことだ。

 開幕戦こそ日本とロシア、それぞれの独唱者によって行われたが、この時も吹奏合奏はなく、音源が流された。その後はニュージーランド―南アフリカ戦、アイルランド―スコットランド戦と取材したが、いずれも音源を流しただけ。思い込みかも知れないが、どこかスタジアムの雰囲気は、本来達するであろう高揚感には物足りなく感じた。

 4年前のイングランド大会で感動したことの一つに、国歌斉唱の臨場感がある。全ての試合に生バンドと合唱隊が登場し、対戦両国の国歌を朗々と歌い上げた。音源演奏にはない抑揚やテンポの変化、何よりも迫力という意味で、これに勝るものはない。

 ブライトンで聞いた君が代。日本語が話せるわけではない現地の人々が、数カ月をかけて準備し、はっきりと聞き取りやすい歌声を響かせていたのが忘れられない。抑揚の付け方やブレスのタイミングは本来とは少し違っても、心を響かせる力を持っていたのは明らかだった。数字では計れないかも知れないが、試合や大会全体を盛り上げるためには、重要なキーファクターではないか。

 簡単ではないことは承知だ。すぐに変更できる類いのことではないことも分かっているが、例えば準々決勝以降の変更ならどうだろう。“英断”を少し、期待している。(記者コラム・阿部 令)

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2019年9月24日のニュース