白鵬 本人否定も“変化”「やっちゃった」0・7秒決着に館内悲鳴

[ 2015年11月12日 05:30 ]

嘉風(右)をはたき込みで下す白鵬

大相撲九州場所4日目

(11月11日 福岡国際センター)
 休場明けの横綱・白鵬は先場所敗れた因縁の小結・嘉風をはたき込んで初日から4連勝とした。立ち合い直後に右に動いて1秒もたたないうちに決着。館内はどよめき、36度目の優勝を狙う横綱本人も取組後に複雑な表情を浮かべた。今場所初めて横綱、大関陣は安泰。全勝は白鵬、大関・琴奨菊に平幕の勢と千代鳳の4人となった。

 こんなあっけない幕切れは当事者の白鵬も予想していなかった。相手は先場所2日目に不覚を取って途中休場の原因となった嘉風。注目の立ち合いで右から張り手を繰り出して即座に右に動き、はたいた。すると相手の両手はバッタリ。わずか0秒7の出来事に館内は悲鳴とため息、さらには怒声まで入り交じった。勝負直後に白鵬は首をひねり、土俵下でも開いた口がふさがらなかった。「やっちゃった」と振り返った通りの表情を浮かべ、勝ち残りに座ってもなお苦笑いが浮かんだ。

 花道を引き揚げ、風呂場に入ったが「どうコメントしようか考えていた」。支度部屋では「来ている人にいいものを見せられなかったのは申し訳ないが、勝負の世界ですから勝って申し訳ないというのも変。気をつけて頑張りますというのが一番似合うのかな」と吐露。最後には「きのう部屋で卓球をやって体が動き過ぎたのかな…」と冗談を飛ばすしかなかった。

 場所前に尾車部屋に出向いて胸を合わせるなど警戒した相手。この日の朝も張り差しを含めて5種類もの立ち合いを試した。「元気さに負けないように」と意気込んでいただけに取組後「考えて張ったんですけどね。完全に“これ(変化)”じゃない」と釈明もした。

 北の湖理事長(元横綱)は「逃げてるなあ」とぼやいたが「体が反応することはある。それだけ不安な気持ちがあったんじゃないか」と一定の理解。藤島審判部副部長(元大関・武双山)は「変化とは違う。張ってるから圧力をずらしたかったのでしょう」と言った上で「横綱ですから受けて立ってという見方もあるが、15日間そういう相撲は難しい」との見解だ。

 瞬時の判断で動いた身体能力は誰もが認めるもの。後味の悪い白星が残りの相撲にどう影響するかは不明だが、ただ一つ言えることは優勝35回を遂げた心は柔(やわ)ではない。

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2015年11月12日のニュース