【こだわりの一品】立行司・式守伊之助「不動心」刻まれた特注軍配

[ 2015年11月12日 11:17 ]

特注軍配を使用する式守伊之助

 40代・式守伊之助(55)は13年10月に立行司に昇進。両国で開かれる東京場所では江戸時代から受け継がれている伊之助の譲り団扇(うちわ)を手に持つが、年3度の地方場所で使用するのは特注のものだ。

 「知人から“立行司になったから軍配を作ってあげたい”と言われたので、自分の心に残る文字を入れてもらいました」。15歳で宮城野部屋に入門した当時の師匠、第43代横綱・吉葉山の宮城野親方が色紙に揮毫(きごう=毛筆で文字や絵をかくこと)した「不動心」の文字の形をそのまま刻んでもらい、今年1月に完成した。「迷うことなく軍配を上げられれば」と3月の春場所から使用している。

 自身が18歳になる直前に師匠はこの世を去った。師弟関係はわずかだったが、強烈な思い出が脳裏に残る。「親方の部屋には大きなすずりがあり、よく習字の練習をさせられた。行司は軍配を持つから便所掃除はするなと言われたことも忘れられない」。行司さんの軍配には先達の魂が宿る。

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