競歩の鈴木雄介、世界新で代表決定!日本男子50年ぶり金字塔

[ 2015年3月16日 05:30 ]

1時間16分36秒の世界記録を樹立し、掲示板の横でガッツポーズを見せる鈴木

陸上全日本競歩能美大会

(3月15日 石川県能美市日本陸連公認コース)
 地元で金字塔を打ち立てた。世界選手権(8月、北京)代表選考会を兼ねて行われ、男子20キロで石川県能美市出身の鈴木雄介(27=富士通)が、1時間16分36秒の世界新記録をマークして優勝した。従来の記録を26秒更新し、4大会連続の代表に決まった。陸上の五輪、世界選手権の実施種目で日本人が世界記録を樹立するのは、01年の女子マラソンの高橋尚子以来。男子では65年の重松森雄(マラソン)以来、50年ぶりの快挙だ。

 北陸新幹線が開業した翌日、異次元のスピードで歩く鈴木に石川県が沸いた。観客の視線を一身に浴び、何度もガッツポーズ。「自分でもびっくり。まさか世界記録までいけるとは思っていなかった。一つの夢がかなった。新幹線で石川が盛り上がるのはもちろんだが、この記録が石川県のアピールになったのかな」。自己記録は1時間18分13秒だったが、8日のフランス選手権でディニ(フランス)がマークした1時間17分2秒を26秒更新する世界新記録。能美市出身の27歳が地元で金字塔を打ち立てた。

 想定を上回るハイペースにも動じない。「落とさずにいってしまおうと思った」と序盤から独走ならぬ独歩に持ち込んだ。1時間16分36秒は1キロ3分50秒ペース。マラソンに換算すると2時間42分を切る。市民ランナーの夢であるサブスリー(3時間切り)を凌駕(りょうが)するスピードだ。不動産関係の徒歩所要時間は1分80メートルで計算される。駅まで徒歩10分(800メートル)は、鈴木には競歩3分にすぎない。

 12年ロンドン五輪はメダル獲得を公言しながら左膝痛の影響で36位に沈んだ。気持ちの高まりが力みにつながった。「ここ3年はそういうパターンになっていた」と今村コーチは言う。昨秋のアジア大会は陸上の男子日本代表主将を務めた。無念の銀メダルに終わっても手応えをつかんだ。「80%の力で勝負できた。そうそういつも100%の勝負ができるわけじゃない」。いい意味で割り切れるようになったことが新記録につながった。

 合宿では自ら早めのタイムを設定し、仲間を引っ張るなど実力は折り紙付き。昨春からは契約社員となって、より競技に集中できる環境も快挙を後押しした。一番の強みは、違反を取られにくい歩型の美しさ。レース終盤にはタイムが落ち込んだが「美しいフォームが僕の理想。美しく歩き抜いて記録を出したかった」とこだわりを貫きゴールにたどり着いた。

 競歩の日本勢は男女通じて世界大会の表彰台がないが、鈴木は一気に今夏の世界選手権、16年リオデジャネイロ五輪の金メダル有力候補に躍り出た。「ここがゴールではなく、もう一段階(力を)上げないといけない。(金メダルを)獲れるところまで来ている。一番の夢は本番(五輪)で金メダルを獲ること」。世界最速かつ最強を目指し、27歳は着実に歩を進める。

 ◆鈴木 雄介(すずき・ゆうすけ)1988年(昭63)1月2日、石川県能美市出身の27歳。辰口中で本格的に陸上を始め、3000メートル競歩、5000メートル競歩で中学最高記録をマーク。小松高で世界ユース1万メートル競歩銅メダルを獲得した。世界選手権は20キロ競歩で09年大会から3大会連続で出場し、11年大会で8位に入った。12年ロンドン五輪36位。昨秋のアジア大会は2位。1メートル70、57キロ。

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