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RB大宮のヘッドオブスポーツを務めるウェバー氏が語る 若手タレントに翼を授ける育成戦略とは

[ 2026年1月29日 13:20 ]

RB大宮の掲げる育成戦略を語るスチュアート・ウェバー氏(RB大宮提供)
Photo By 提供写真

 RB大宮アルディージャが、2月初旬に開幕する明治安田Jリーグ百年構想リーグに向けて打ち立てる成長戦略とは――。2024年8月にレッドブル社は、NTT東日本から当時J3の大宮アルディージャの全株式を取得を発表。翌月に経営権が移行し、クラブ名は「RB大宮アルディージャ」へと変更された。RBライプチヒ(ドイツ)などと連携する「マルチ・クラブ・オーナーシップ」を導入し、独自の育成ノウハウの提供も始まった。さらに、世界的なネットワークを生かした育成型クラブへの転換を目指すなかで、昨年9月にはスチュアート・ウェバー氏がクラブのスポーツ部門の全てを統括するヘッドオブスポーツに就任。同氏に、レッドブルと大宮が描く今後の展望を聞いた。(取材構成・馬場康平)

 ウェバー氏は、まず今回の特別大会「百年構想リーグ」の位置づけについて「この期間を使って、我々のサッカーがどういうものなのかをチームに根付かせていきたい。また、我々の抱えている選手の見極めもできれば」と口にする。そのレッドブルが掲げる我々のサッカーとは「インテンシティこそ我々のアイデンティティーだ」と言う。

 「自分たちは前向きに、自分たちから主導権を取りにいく、自分たちからアクションを起こして攻撃的にやっていく」

 その練度と深度を深めていくなかで、今オフの補強では多くの若手を積極的にチームに迎え入れた。年齢層を一気に引き下げたのも狙い通りだという。今回のシーズン以降期間と歩調を合わせるように未来に向けた投資が始まったのだ。クラブの土台となるのは、持続可能な成長戦略だという。

 「経験のある選手の力を借りながら日本のなかでも若くて良いタレントを連れてきて、彼らを成長させていく。それが1番できるクラブだとしっかりと証明したい。トップチームだけでなく、アカデミーも充実させていかなければならない。タレント、スタッフ、施設のインフラ面も良くした上で、トップチームへの昇格、さらに海外に、と。そういう道筋を作っていかなければならない」

 クラブを買収してから1年半が経過し、資金と時間をかけながら一歩ずつインフラの整備を進めつつ、人材の確保に努めてきた。ただ、有望な若手をかき集めるだけでは「不完全だ」と言い、彼らの手本となる選手が必要不可欠になる。そのために、新たに経験豊富なオーストラリア代表GKトム・グローバーもスカッドに加えた。

 「たとえばオリオラ・サンデーのような若い選手が成功するためには、隣に杉本健勇のような代表経験のあるような選手がいて、彼らをしっかりとピッチ上で指導して、もちろん若い選手が見て学んで、成長していかなければいけない。最終的にはスカッドのバランスが大事になってくる」

 今オフには昨年11月のU―17W杯カタール大会で8強進出に貢献した、FWマギージェラニー蓮をFC琉球から完全移籍で獲得している。彼のような将来性豊かなタレントと交渉する際には「我々のところに来れば、こういった可能性、機会があるという話をしている」と口にする。選手個々に応じた、パスウェイ(競技力向上のための段階的フレームワーク)を共に描く際の新たな武器となるのがやはり独自の育成ノウハウだ。

 その一例として、ウェバー氏はRB大宮のU-16チームが来月参加予定のレッドブル・ブラガンチーノの主催するブラジルの大会への出場や、トップ登録している神田泰斗が既にライプチヒの練習に3度の参加していることを挙げた。さらに、日々の練習でも、よりヨーロッパに近いスタイルでのコーチング環境を提供していく。

 「日本にきて若い選手に話を聞いてみると、99%くらいの選手が将来的にはヨーロッパに行ってみたいと言う。そのための準備として、我々のクラブでヨーロッパに近い形でのコーチングを受けながらプレーすることができるという話もしている」

 若手育成のために欠かせない出場機会の確保も、編成段階から戦略的に意識してきたという。少数精鋭を掲げるのは人数を絞れば、必然と出場の可能性が高まるからだ。同時に、選手を獲得する際には「出場機会は与えるものではない」と、正当な競争を勝ち抜くことも伝えてきた。トップチームの人数を絞った一方で、他クラブへの期限付き移籍で活躍の場を求めた選手たちのフォローアップも怠ることはない。そのために、ローンマネジャーの役職を新たに設けた。

 「若手を成長させる手助けにつながる役職で、選手たちの成長過程を追いかけたり、彼らがどのような練習、パフォーマンスをしているのかをしっかりと我々に報告し、選手と我々のつながりを確保してくれる存在を担ってほしいと思っている」

 こうした選手育成を促す仕組みづくりも今後さらに進んでいくだろう。かつてスペインの名門バルセロナは2014年4月に、18歳未満の国際移籍を原則禁止とする国際サッカー連盟(FIFA)の規約に違反したとして処分を受けた。その影響で当時、規約違反にあたるとされた下部組織に在籍していた選手が公式戦に出場できなくなった。その一人が現在の日本代表MF久保建英だった。そうした影響で、世界的な各クラブは新たな育成のカタチを模索してきた。今回のレッドブルグループが掲げる世界を股にかけた壮大な育成プロジェクトは、そのなかで新たな選手育成のカタチとして今後大きなインパクトを世界に与えるかもしれない。ウェバー氏は言う。

 「18歳以下の移籍のルールができたのは、あまりにも若い選手が海外移籍するのはいいことなのか、悪いことなのかということは議論されているところ。そのルールのなかで、私たちレッドブルのグループには、ナンバーワンチームとしてライプチヒがある。彼らはこの夏に多くの若手を獲得したうえで、いまのようなパフォーマンスを残している。自分たちもそのグループの一員として理想では、我々からライプチヒに若い選手をどんどん輩出していければいい。もちろん、それが難しかったとしても、ライプチヒではなくほかのクラブに日本の若いタレントを成長させて輩出できたらと思っています。それが我々だけでなく、レッドブル、大宮のやっていることが日本サッカーにとって良いインパクトを残せるのではないかと自分は考えています」

 26日には、クラブを通じて市原吏音の海外移籍を前提とした手続きと準備による離脱が発表された。持続的な成長を実現させるために、今後もその歩みを加速させていく。若くして有望なタレントに“翼を授ける”野心的な育成戦略は、まだ大宮で幕を上げたばかりだ。

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