元Jリーガー・渡辺一平さん 心の肥やしに“農活” 横浜フリューゲルスなど5クラブで活躍
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【蹴トピ】元Jリーガーが農業の魅力に取りつかれた。横浜フリューゲルスなどでDFとして活躍した渡辺一平氏(55)だ。解説やスクール指導でサッカーに関わる傍ら、神奈川県内で米や野菜、お茶作りに取り組んでいる。しかも全てボランティア。物作りの楽しさも実感し、今後も農業を通じて自分探しを極めていく考えという。
神奈川県松田町「いしい茶園」の南向き傾斜地に広がる茶畑。そこに渡辺氏の姿があった。寒いこの時季に取り組むのは、お茶畑の整備。まず新芽が出たときに収穫しやすいように、木の形を整える。機械を使うので作業は複数人必要だ。
3~4月に入ると遅霜対策に移る。無農薬でやっているため、イノシシやアナグマが来て荒らされる被害もあり、そこに畑の修復作業も加わる。「サッカーと一緒で、オフに何もしないと、あとが大変」。この時季の作業の大切さを実感しているようだ。
農業への興味はコロナ禍がきっかけだった。00年の現役引退後は、コーチや解説者として多忙の日々を送った。だが20年に新型コロナ感染症が拡大。すると欧州の主要リーグの試合が打ち切りになり、解説の仕事が減少し、今後の人生を考えるようになった。
同じ頃、料理人だった義弟が食材へのこだわりから、「自分で野菜などを無農薬で作ろう」と考え、全国を回った末に神奈川県秦野市で耕作放棄地を借りて、米や野菜作りを始めた。渡辺氏は義兄も近くに引っ越して、時間があるときにみんなで手伝うことになった。
田のあぜを作り、スズメよけの網を張り、竹を切り出す――。収穫した稲を干すウマも作った。米や野菜の収穫以上に、木を切り出したり、田や畑を整備することに引かれた。もちろん収穫した米や野菜は新鮮で味も格別。「最初は生活のリズムや環境を変えようと思っただけだったが、気がついたら面白くて」。無になって木を切ったり土を耕すことで、探していたものが見つかった。
サッカー関連の仕事場には、片道1時間ぐらい余計にかかるようになったが、農業の楽しさを考えれば、苦にならなかったという。「体を動かすので、食事がおいしいし、お酒も進む」。充実した毎日。今後は重機の免許取得やドローン操縦講習を受けることも視野に入れる。
昨夏には、貴重な出会いもあった。雅代夫人が、町の職員からお茶園を経営している石井久和さんを紹介された。石井さんは「いしい茶園」の7代目で、サッカークラブ「鎌倉インターナショナル」の運営にも携わっている。2人はすぐに意気投合。渡辺氏は義弟の農業に加え、お茶栽培も手伝うことになった。お茶は作業時は人手がいるが、期間は短い。渡辺氏は茶摘みはまだ経験がなく、今年5月1日の八十八夜、新茶の摘み取りを心待ちにしている。
これだけ農業に時間を費やしているが、あくまでも解説や指導が本業。農業は「リフレッシュのため」で、収穫した米や野菜をもらうだけで、全てボランティアだ。横浜F時代はドレッドヘアでピンクのポルシェを乗り回していた渡辺氏だが、当時とは180度違う生活。それでも「年を重ねれば、人は変われる。自分がやりたいことをやっているだけだが、心豊かになれるものがぜいたくですよ」と笑う。農業について話す時は実に楽しそうな表情を見せる。
高齢化が進み、日本の農業は後継者がいないために耕作放棄地が増えている。やりたい人がいても、設備投資や人手が必要で、しかも簡単には雇えないので小規模で収入も少ない。夢を追うより、別の仕事をするしかなく、農業をやめる悪循環となっている。
渡辺氏もいずれは自分で米を作りたいという思いはあるが、簡単には踏み出せない。それでも、渡辺氏のチャレンジはサッカー選手のセカンドキャリアとして可能性を秘める。支援があれば、夢は広がる。Jリーガーと農業のコラボは今後、注目されるかもしれない。(大西 純一)
≪“存続危機”救った≫「いしい茶園」がある松田町寄(やどりき)は丹沢の水がある上に、水はけが良く、お茶の栽培が盛んだ。石井さんは先代の父親が1人で経営した時、繁忙期に手伝っていた。19年に父が他界し、当初は「今年だけはやろう」と消極的だったが、町の支援もあって継続。それだけに渡辺氏のサポートは大きな戦力になっている。
≪石井さんが運営携わるクラブ「鎌倉インターナショナル」≫「鎌倉インターナショナル(鎌倉インテル)」は神奈川県リーグに所属。明大やJ3盛岡の監督を歴任した神川明彦氏がクラブアドバイザー兼アカデミープリンシパルを務め、Jリーグ入りを目標に掲げる。鎌倉市には本格的なグラウンドがなく市外に行くことが多かったが、今年1月に「ゴールドクレストスタジアム鎌倉」が完成。次第に“輪”が広がってきた。
◇渡辺 一平(わたなべ・いっぺい)1969年(昭44)9月28日生まれ、名古屋市出身の55歳。中京高から大商大を経て92年に横浜F入り。Jリーグ発足の93年開幕戦で先発し、その後磐田、神戸、水戸、横浜FCでもプレー。00年に現役引退し、清水ユース、日大コーチを歴任。雅代夫人は自身の経験から不妊体験者の支援や妊活ヨガセラピストとして活動。
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